売上高が減少するのは、為替レートの前提を円高に設定することによる換算差を反映している。想定為替レートは1ドル=145円で前年度比7.6円の円高、1ユーロ=160円で同3.7円の円高と見込んでいる。自動車メーカーからの内示と独自の予測をすり合わせた日系自動車メーカーの生産見通しは、国内が1.2%増の833万台、海外が同2.9%増の1690万台とした。
営業利益は為替差損や部材費高騰の影響があるものの、固定費の投入を絞るなど合理化努力によって増益を見込む。
トランプ政権の関税政策について、デンソー 代表取締役副社長の松井靖氏は「法人税の減税があるかもしれないし、メキシコペソが安くなるなどポジティブな側面もあるかもしれない。全体を俯瞰して影響額を見極め、パニックに陥らないことが重要だ。関税分はできる限り誠実に圧縮し、それでも難しい分は取引先に相談して価格転嫁させてもらうことになるだろう。仕入れ先の中小企業への影響は、われわれが払っていく」と説明した。
2025年度の設備投資は2024年度並みの3700億円を計画している。2024年度は電動化市場の成長鈍化など環境変化に対応して規律をもって投資の執行を判断し、設備投資の増加を抑制した。2025年度は電動化と自動運転に集中的に投資していく。SiCパワー半導体はEV(電気自動車)の市場が減速しているが、手の内化/内製化を進めて投入するという。
研究開発費は前年度比406億円増の6600億円を予定する。自動運転向けのソフトウェアやSoC(System on Chip)、環境分野、安心安全分野といった成長をけん引する領域への投入を強化していく。2025年末には第4世代の自動運転システムを投入するため、第5世代に向けた開発やSiCパワー半導体を使った電動化製品の制御技術などに投資を集中させていく。
松井氏は米国や中国の市場見通しについて次のようにコメントした。「米国市場はまだ成長していくが、メーカーごとに明暗が分かれている。中国市場は鈍化しているが、政府の補助金延長もあって量がまだ維持されている。ただ、市場で勝っているのは中国の地場メーカーで、日系自動車メーカーをはじめとする外資系は苦戦している。日系自動車メーカーが市場で勝てるよう、いい製品を供給していきたい。中国地場メーカーへの販売も拡大していく」(松井氏)
デンソー 代表取締役社長の林新之助氏も「中国市場で求められるものを、中国のパートナーと開発し、スピードやコストがついてくるようにしていく。それが日系自動車メーカーにも貢献する」と説明した。
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