米国商用EVがパナソニック エナジーの「2170セル」採用、今後は米国からの供給も:電動化
パナソニック エナジーは、同社の車載用円筒形リチウムイオン電池「2170セル」が米国の商用EVメーカーであるハービンジャー(Harbinger Motors)に採用されたことを発表した。
パナソニック エナジーは2025年4月23日、同社の車載用円筒形リチウムイオン電池「2170セル」が米国の商用EV(電気自動車)メーカーであるハービンジャー(Harbinger Motors)に採用されたことを発表した。今後、ハービンジャーが米国で生産する中型EVトラック全モデルのバッテリーシステムに2170セルが標準搭載されることになる。
今回ハービンジャーが採用した2170セルは800Wh/l(リットル)を超えるエネルギー密度を有している。パナソニック エナジーの日本国内工場で製造した2170セルは、米国カリフォルニア州ガーデングローブにあるハービンジャーの本社工場に納入される。将来的にはパナソニック エナジーがカンザス州デソトに建設中の新工場から2170セルを供給することも検討している。
2021年設立のハービンジャーは、配送用トラックや緊急/災害対応車両など中型商用EVに特化した米国の自動車メーカーであり、カリフォルニア州の自社工場で電動シャシーの設計から生産まで手掛けている。車体上部を持たない、駆動系と車台など基本構造のみを備えた車両ベースである独自のストリップドシャシーには、自社開発の電動ドライブトレインやバッテリーシステムなど主要システムが全て搭載されており、業界でも特徴的な垂直統合型のアプローチにより、コストを抑えつつ、性能、安全性、耐久性の向上を実現しているという。
ハービンジャーは2025年初頭から中型商用EVの生産を開始している。食品メーカーのBimbo Bakeries USAやレジャー用車両(RV)メーカーのTHOR Industriesなど米国大手企業からの受注を含め、約5000台の予約注文への対応を進めているところだ。
ハービンジャー CEOのJohn Harris氏は「当社の安全性や技術開発へのこだわりがパナソニック エナジーとの協業を実現した。同社のセルは、主要EVメーカーに搭載されている高い実績と業界トップクラスの安定品質で他社と一線を画しており採用の大きな決め手になった。当社のシャシーに世界最高水準のバッテリーが搭載されることをうれしく思う」と述べている。
なお、パナソニック エナジーの車載用円筒形リチウムイオン電池は、2025年3月時点で、EV約370万台分に相当する約190億個の電池セルを供給しており、これまで同社の電池に起因する車両リコールは一切発生していないとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
電池人材が足りない! パナソニックエナジーが奨学金給付などで育成へ
パナソニックエナジーは、電池産業の発展に貢献する人材の育成を目的とする「MIRAI奨学金」を2024年度に続き2025年度も実施すると発表した。2030年には採算ラインに? パナソニック エナジーが強化するEV電池リサイクル
パナソニックグループは、エレクトロニクスを中心とした最先端テクノロジーの展示会である「CES 2025」のオープニングキーノートで、北米でEVバッテリーのリサイクルを積極的に推進する方針を明らかにした。狙いについて、パナソニック エナジー 代表取締役 社長執行役員 CEOの只信一生氏の話をお伝えする。パナソニック エナジーが使用済み乾電池を肥料原料にリサイクルするプロセスを確立
パナソニック エナジーは、東洋製罐グループホールディングスの連結子会社であるTOMATECと共同で、パナソニック エナジー製の使用済み乾電池から分離した亜鉛やマンガンなどの成分を含む混合粉末を微量要素肥料の原料に活用するリサイクルプロセスを確立した。EV向け「4680セル」電池の量産準備完了、パナソニック エナジーが和歌山工場で
パナソニック エナジーは、EV向け円筒形リチウムイオン電池の最新型となる「4680セル」の量産準備を完了し、同セルのマザー工場となる和歌山工場の開所式を行った。今後、戦略パートナーの最終評価を経て量産を開始する。マツダがパナソニック エナジーの円筒形リチウムイオン電池採用を正式決定
マツダとパナソニック エナジーは、車載用円筒形リチウムイオン電池の供給に向けた合意書を締結したと発表した。パナソニック エナジーが高容量の次世代シリコンを確保、EV用LIBの負極で活用
パナソニック エナジーは、EV向け車載用リチウムイオン電池の負極に用いる次世代シリコン材の調達に向け、Sila Nanotechnologiesと売買契約を締結した。北米における車載電池の生産拡大と、サプライチェーンの構築を図る。