低コストな顔料でCO2をCOへ高効率に変換できる電解技術:研究開発の最前線
東北大学は、CO2からCOへ高効率に変換できる電解技術を開発した。低コストな顔料を電極上で直接結晶化させることで、プロセス時間の短縮と触媒性能の向上が可能になった。
東北大学は2025年4月8日、北海道大学、AZUL Energyと共同で、CO2(二酸化炭素)からCO(一酸化炭素)へ高効率に変換できる電解技術を開発したと発表した。低コストな顔料を電極上で直接結晶化させることで、プロセス時間の短縮と触媒性能の向上が可能になった。
CO2を炭化水素化合物のCOへ変換する技術は、温室効果のあるCO2を有効活用(Carbon dioxide Capture and Utilization:CCU)する技術の1つだ。これまでにさまざまな変換手法が開発されているが、中でもCO2電解還元反応は、常温かつ常圧の温和な条件で進行するCO2の資源化技術として期待されている。
研究では、CO2電解還元反応によるCO2からCOへの変換を効率化するため、顔料の1種で金属錯体のコバルトフタロシアニン(CoPc)に着目。CoPcや無金属フタロシアニン(H2Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、鉄フタロシアニン(FePc)などの溶液をガス拡散電極上にスプレー塗布し、フタロシアニン類を直接結晶化してCO2電解用の電極を作製した。
同手法により、バインダー(接着剤)を使わずに触媒を電極上に固定化できるようになった。導電炭素やバインダーと混合して塗布、乾燥させて熱処理する従来手法に比べ、作業時間を15分ほど短縮できる。
作製した電極を正極として、アルカリ電解質中でCO2電解還元反応を実施したところ、CoPcが最も効率的にCO2からCOへ変換できた。CoPcは、実用に十分な1.034A/cm2の高い電流密度で90%以上のファラデー効率(FE)でCOに変換できた。また、電流密度150mA/cm2における耐久性試験では、143時間にわたって95%以上の変換効率を維持した。
今回の金属錯体の直接結晶化によるガス拡散電極作製法とCO2電解技術により、CO2から合成燃料の中間体となるCOを安価な顔料触媒で高効率に合成するプロセス開発につながることが期待される。
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