協業で使用済みリチウムイオン電池のニッケルをリサイクル:リサイクルニュース
パナソニック エナジーと住友金属鉱山は共同で、電池廃材から正極材原料となるニッケルを回収し、リサイクルする取り組みを開始した。パナソニック エナジーの車載事業では初の取り組みとなる。
パナソニック エナジーは2025年3月31日、住友金属鉱山と共同で、リチウムイオン電池の正極材原料であるニッケルのリサイクルを開始すると発表した。
住友金属鉱山は2017年から、使用済みリチウムイオン電池や電池廃材から回収した銅とニッケルを再資源化し、同社の正極材原料として利用してきた。
今回の連携により、住友金属鉱山の東予工場(愛媛県西条市)とニッケル工場(同新居浜市)において、パナソニック エナジーの住之江工場(大阪府大阪市)の製造プロセスで生じた廃材から硫酸ニッケルを回収し、その硫酸ニッケルで製造した正極材をパナソニック エナジーのリチウムイオン電池材料に使用する。
両社は、ニッケルのリサイクルを手始めに、2026年以降はリチウムやコバルトなど、他の正極材原料に関しても同様の取り組みを進める計画だ。なお、使用済み製品の材料を再原料化して同じ製品に用いる「クローズドループリサイクル」は、パナソニック エナジーの車載事業において初の取り組みとなる。
今後、電気自動車(EV)の利用拡大により、廃棄される使用済み車載電池の量が2030年ごろから急速に増加すると見込まれている。リチウムイオン電池には、希少資源のニッケル、コバルト、リチウムなどのレアメタルが使用されており、EV市場が持続的に成長していくには、使用済み電池のリサイクルシステムを確立する必要がある。
パナソニック エナジーでは、車載電池事業において、2027年までにリサイクル材を用いた正極材の比率を20%とする目標を掲げている。また、工場でのリサイクルなど都市鉱山を通じた材料の獲得は、天然鉱山での採掘に比べてCO2の排出量を大きく減らすことから、2030年度のカーボンフットプリントを2021年度比50%にするという同社の目標達成にも貢献する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
リチウムイオン電池の基礎知識とリサイクルが必要なワケ
本連載では東北大学大学院 工学研究科附属 超臨界溶媒工学研究センターに属する研究グループが開発を進める「リチウムイオン電池リサイクル技術の水熱有機酸浸出プロセス」を紹介する。第1回ではリチウムイオン電池の基礎知識やリサイクルが必要な背景、当研究グループの取り組みの一部を取り上げる。リチウムイオン電池の完全循環システムは構築できるのか
本連載では東北大学大学院 工学研究科附属 超臨界溶媒工学研究センターに属する研究グループが開発を進める「リチウムイオン電池リサイクル技術の水熱有機酸浸出プロセス」を紹介する。第5回ではリチウムイオン電池の完全循環システム構築に向けた取り組みを取り上げる。グリーン溶媒と水熱条件の基礎知識、LiFePO4からリチウムを回収する流通式水熱装置
本連載では東北大学大学院 工学研究科附属 超臨界溶媒工学研究センターに属する研究グループが開発を進める「リチウムイオン電池リサイクル技術の水熱有機酸浸出プロセス」を紹介する。第2回ではグリーン溶媒と水熱条件の基礎知識や著者の研究室で利用している流通式水熱装置について紹介する。リチウムイオン電池リサイクル技術の現在地
本連載では東北大学大学院 工学研究科附属 超臨界溶媒工学研究センターに属する研究グループが開発を進める「リチウムイオン電池リサイクル技術の水熱有機酸浸出プロセス」を紹介する。最終回となる第6回ではこれまでのまとめとリチウムイオン電池に関する研究論文の特徴を取り上げる。旭化成とホンダがカナダでリチウムイオン電池用セパレータ生産に向け合弁会社設立
旭化成とホンダは、カナダでのリチウムイオン電池用セパレータ生産に関する協業に向けて合弁会社設立のための株主間契約を締結した。