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超分子ポリマーの構造と機能を同時に観察する新手法:研究開発の最前線
北陸先端科学技術大学院大学は、高速原子間力顕微鏡を活用した固液界面における一分子イメージングにより、これまで不可能だった超分子ポリマーの構造解析に成功した。
北陸先端科学技術大学院大学は2025年3月11日、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を活用した固液界面における一分子イメージングにより、これまで不可能だった超分子ポリマーの構造解析に成功した。
これまでの手法では、超分子ポリマーについて、構造と機能のどちらかしか確認できなかった。新手法では、1ミリリットル(ml)当たり1μg未満と濃度の低い溶液で超分子ポリマーを基板に固定することで、構造と機能を同時に観察できた。
具体的には、シクロデキストリンという環状分子にポリエチレングリコールという長鎖分子が入り込んだ、分子ネックレス構造を高速AFMで直接観察して、その分子構造とダイナミクスを把握した。この分子構造とダイナミクスを全原子動力学(全原子MD)シミュレーションで再現したところ、実験結果と合致していた。
この研究成果は、超分子材料の構造特性や機能の解明に大きく寄与するもので、特に分子レベルでの精緻な構造制御を必要とする次世代の分子マシンの開発促進に役立つと考えられる。今後、開発した手法の応用により、超分子ポリマーの新たな設計の可能性が広がることが期待される。
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