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従来の10倍以上の量子特性を有する高輝度蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを開発:研究開発の最前線
筑波大学らは、量子グレードの高輝度蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを開発した。従来の10倍以上の量子特性を有し、温度量子測定においても1桁以上、感度が向上した。サーマルエコーも観測が可能だ。
筑波大学は2024年12月23日、量子グレードの高輝度蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを開発したと発表した。岡山大学、量子科学技術研究開発機構、北陸先端科学技術大学院大学との共同研究に、住友電気工業による協力を得た成果だ。
開発した蛍光ナノ粉末ダイヤモンドは、従来の10倍以上の量子特性(量子コヒーレンス)を有する。スピン不純物(孤立窒素原子や天然炭素に含まれる約1%の13C同位体)を大幅に減らし、ダイヤモンド成長法とナノ粒子粉砕法の最適化により、窒素空孔欠陥中心(NV中心)を効率的に生成。NV中心が約1ppm、孤立窒素が約30ppm、13C同位体が0.01%以下に制御された、平均粒径277nmのナノ粉末ダイヤモンドの作製に成功した。
これにより、光検出磁気共鳴信号(ODMR)が改善し、量子コヒーレンス時間を10倍以上に延長できる。さらに、これらの蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを細胞内に導入し、従来品より高感度にODMR信号を検出できた。
また、温度量子測定においても1桁以上、感度が向上し、超高感度温度測定法「サーマルエコー」も観測が可能だ。
優れた光安定性と生体適合性を持つ蛍光ナノ粉末ダイヤモンドを用いた量子センシングは、生命科学やナノテクノロジー分野で注目されている。細胞内やナノ電子デバイスの温度や磁場が超高感度で測定可能になり、幅広い商用化が期待される。
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