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パナソニックHDと統計数理研、材料から結晶構造を予測する機械学習モデルを開発:製造ITニュース
パナソニック ホールディングスと統計数理研究所は、材料の組成からその結晶構造を高速で高精度に予測するMLアルゴリズム「ShotgunCSP」を開発した。結晶構造予測のベンチマークにおいて世界最高性能を達成したという。
パナソニック ホールディングス(パナソニック)は2025年3月4日、統計数理研究所と共同で、材料の組成からその結晶構造を高速で高精度に予測するML(機械学習)アルゴリズム「ShotgunCSP」を開発したと発表した。
結晶構造予測は、以前から物質科学の基本問題として研究されてきた。しかし、大規模な結晶系や複雑な分子系では、広大な相空間を網羅的に探索する必要があるため計算資源が膨大になり、未解決の問題となっていた。
今回、MLアルゴリズムを導入することで、安定した結晶構造が持つ対称性(空間群やワイコフ配置)のパターンを高精度で予測できることを発見。これを用いて探索空間を大幅に絞り込むことで、これまで必要とされてきた第一原理の繰り返し実行を省略し、大規模かつ複雑な結晶系でも効率的かつ高精度に構造を予測できることを実証した。同社によると、結晶構造予測のベンチマークにおいて世界最高性能を達成したという。
同研究で実施した性能評価テストによると、ShotgunCSPは全結晶系の約80%を正確に予測できる可能性があることを示した。
ShotgunCSPアルゴリズムは、新材料開発や科学的発見の速度を速めることのできる基盤技術だ。物質の安定構造を特定することで高温超伝導や電池材料、触媒、熱電材料分野などでの物質の探索が大きく進展する。
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