SDV時代のゾーンECUには何が求められるか、NXPがMCUを発表:車載半導体(3/3 ページ)
NXP SemiconductorsはSDV向けにE/Eアーキテクチャを進化させる車載マイクロコントローラー「S32K5」を発表した。
ドメイン集約型のアーキテクチャは一見するとシンプルだが、1つのドメインが扱う機能は複数あり、車両の1カ所に集まっているとは限らない。そのドメインのためにワイヤハーネスのレイアウトが複雑になる課題が残る。そのため、ゾーンアーキテクチャに移行する必要があるという。
セントラルコンピュータを使うゾーンアーキテクチャでは、セントラルコンピュータがそれぞれのゾーンを統合制御する。ゾーンECUは末端のECUから上がってくるセンサーやアクチュエーターの信号をセントラルゲートウェイに転送し、セントラルゲートウェイでの処理結果を基に末端のECUに指令を出す役割を担っていく見通しだ。
ゾーンアーキテクチャは複雑さを軽減
ただ、セントラルゲートウェイで統合制御する場合、ソフトウェアが複雑になる。山本氏は「ハードウェア的にもさまざまな機能が増えるが、それとは比べものにならない勢いでソフトウェアは複雑になっている」という。セントラルコンピュータでゾーンごとに統合制御するのは、ソフトウェアの複雑さの軽減にも寄与するとしている。
セントラルゲートウェイにはほとんどのアプリケーションが搭載されるため、OTAでのアップデートや機能の追加、メンテナンスなどを行いやすい。例えば、クルーズコントロールの機能を追加する場合、自動運転/ADASやパワートレインなど複数のシステムがかかわる。ECUが分散しているハードウェア中心のE/Eアーキテクチャでは複数のECUを同期させながらアップデートしなければならないが、セントラルゲートウェイだけのアップデートで済む。
ゾーンECUはその先にあるセンサーやアクチュエーターのゲートウェイ的な役割を担うため、ネットワークとしてのパフォーマンスが重要になる。アクチュエーター自体は、制御用マイコンが省略されるものも出てきて、センサーの情報を上位のECUに伝えるネットワークのパフォーマンスが重視されていく。
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