修復再利用に対応した軸受を新たに開発、NSKが確立目指すPLMモデルの主要製品:FAニュース(2/2 ページ)
日本精工(NSK)はリコンディショニングに対応した高負荷容量大形円すいころ軸受を開発した。
独自技術の高精度寿命予測と新構造でリコンディショニング実現
そこでNSKは、2024年に発表した同社のMicro-UT法を用いた高精度寿命予測を活用することで長寿命化を実現した。
軸受の寿命は、鋼材材料の中の非金属介在物の大きさや量に左右される。NSKが開発したMicro-UT法を用いた検査では、非破壊で鋼材中の非金属介在物のデータを取得できる。そして、非金属介在物周辺の応力解析や回転試験方法を確立することで、軸受の負荷容量のパラメーターである基本同定格荷重を向上させることに成功した。
これにより、軸受寿命計算において寿命を最大2倍に延長することができ、長期使用時の寿命担保を可能にした。
※6 基本動定格荷重C:転がり軸受の負荷能力で、外輪静止状態にて内輪を100万回転できる方向と大きさが変化しない荷重を表す
※7 定格疲れ寿命L10:同一名番軸受を同一条件で個々に回転させた時、その内の90%の軸受が転がり疲れによるフレーキング(はくりを起こさず、回転できる総回転数
分離構造化については、内輪の小つばを取り外し可能な構造にすることにより、ころ、保持器と内輪の分離を可能にし、全部品の詳細点検が可能な仕様にした。分離型小つばと内輪はボルトで締結している。万が一のボルトの脱落を防ぐため、締結部にかしめ構造を設けており、鉱山現場など振動が作用する使用環境での信頼性を向上した。
今回の開発品を1回目はリコンディショニングし、2回目の設備メンテナンス時に廃棄する場合、軸受の交換数を従来と比べて半減できる。それに伴い、CO2排出量の削減にもつながる。
「これまでも中国や北米では、標準的な構造の軸受について内部を詳細点検しない範囲で簡単な修復を実施してきた。ただ、内部をしっかり点検して修復するというリコンディショニングというのは初めて」(NSK)
リコンディショニングの作業については、ユーザーの拠点でユーザー自ら行うか、NSKの拠点に引き取り行うかの2パターンを想定する。
NSKは、PLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)モデルの確立に取り組んでおり、今回の開発品は、PLMモデルのリコンディショニングを実現する主要製品として位置付けている。
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