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差動回転により磁気の流れを生成するメカニズムを解明:研究開発の最前線
慶應義塾大学は、物質の場所ごとに角速度が異なる「差動回転」により磁気の流れを生成するメカニズムを解明した。2つの円筒に挟まれた液体金属が形成する差動回転流を具体例に、スピン流の発生を示した。
慶應義塾大学は2025年2月10日、物質の場所ごとに角速度が異なる「差動回転」により、磁気の流れを生成するメカニズムを解明したと発表した。日本大学、中央大学、中国科学院大学との共同研究による成果だ。
磁気と回転運動が互いに変換される磁気回転効果を利用したスピン流生成は、音波や液体金属の渦運動を利用して生成されている。しかし、水が渦巻くような過度(流体や回転運動における位置ごとでの渦成分の強さや密度を表す量)が必要と考えられていたため、適用できる材料などが制約されていた。
これに対し研究グループは、2つの円筒に挟まれた液体金属が形成する渦なしの差動回転流を具体例に、半径方向の角速度の違いから磁気回転効果を介したスピン流が発生することを示した。
液体のような変形できる軟らかい物体の場合、位置によって異なる角速度で回転する差動回転が可能だ。全体が一斉に同じ角速度で回転する剛体回転とは異なり、渦度と角速度は比例関係にないため、渦度のない回転運動を形成できる。
角速度差のみでスピン流を生成する技術により、デバイス設計の簡略化や、貴金属やレアメタルが不用なスピンデバイスへの応用が期待される。
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