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インホイールモーター型電気自動車の世界的普及を目指すベンチャー「シムドライブ」が設立電気自動車(1/2 ページ)

慶応大で高性能電気自動車「Eliica」の開発を手がけた清水教授らを中心に、インホイールモーター型電気自動車技術を、ソフトウェアのオープンソース方式に似たやり方で普及させようというベンチャー企業が設立された。

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 シムドライブ社は8月24日、車輪の内部にモーターを搭載するインホイールモーター型電気自動車技術「SIM-Drive(シムドライブ)」の世界的普及を目指して「株式会社シムドライブ」が設立されたと発表した。

 シムドライブ社は国立環境研究所や慶応義塾大学で30年にわたり8台の電気自動車の開発に携わった慶応大環境情報学部教授の清水浩氏が代表取締役社長を務め、ベネッセコーポレーション会長兼CEOの福武總一郎氏が取締役会長、ガリバーインターナショナル会長の羽鳥兼市氏、ナノオプトニクス・エナジー社長の藤原洋氏らが取締役を務めている。また、クオンタムリープの出井伸之代表取締役、慶応大環境情報学部の村井純教授、同大学院政策・メディア研究科の高野正教授が同社の顧問を務める。

集合写真
(写真中央、左から4番目から)シムドライブの藤原洋取締役、清水社長、福武取締役、羽鳥兼市取締役

 資本金は4400万円。慶応大アントレプレナー支援資金を受けたほか、福武總一郎氏、ガリバーインターナショナル、ナノオプトニクス・エナジー、ベネッセコーポレーション、丸紅などの出資を受けて産学連携での設立となる。

 清水社長は「(環境・エネルギー問題解決の切り札として)電気自動車をどうしても普及させなくてはいけない時代が来ている。この実現のため30年にわたって8台の電気自動車の開発に携わってきた。こうした基盤をもとに、この先進的な技術を世界標準として早急に普及させる必要がある」と設立の背景を説明した。

清水浩社長
自ら携わった電気自動車KAZ(奥)とEliica(手前)を前にSIM_Driveの優位性について説明する清水社長

 「これまで蓄えたノウハウや特許をもとに要素技術の標準化と先行開発車事業を同社に賛同する複数企業とともに作る。さらに技術を発展させて世界中の自動車産業に技術移転して生産を支援する。こうした技術の普及は(ソフトウェア開発における)オープンソースの発想で行う」ことが同社のミッションであり、同社自身は自動車を生産するのではなく「世界のすべての自動車産業を支援する企業」としている。

 「ガソリン自動車に比べて電気自動車が高性能、高機能、廉価でなければ電気自動車の普及はない、そのためには新しい技術・構造を導入することが必須だと考えて開発してきたが、充分に世界中に普及できるクルマができたと考える」(清水社長)

  SIM-Drive(SHIMIZU In wheel Motor-Drive)とは、シムドライブ社が提供するノウハウによって開発された電気自動車を構成するコンポーネントおよびその総称。インホイールモーター、インバーター、電池で構成される駆動系と、駆動系を搭載するプラットフォームから成る。同社が認証したコンポーネントを用いた電気自動車を「by SIM-Drive」あるいは「Platform by SIM-Drive」と表現する。

SIM-Drive platformの例
SIM-Drive platformの例(Eliicaのもの)

 技術的説明を行った高野正技術顧問によると、SIM-Driveはわずかな部品とバリエーションを用意することによって、多数の車種に適用できることが特長で、駆動系とそれを車体に取り付けるサスペンションを利用するby SIM-Driveと、それらコンポーネントを強固なフレーム構造中に充電部品とともに搭載するプラットフォームを利用するPlatform by SIM-Driveの2つの選択肢を用意する。これにより、始めからすべて開発する自動車だけでなく、既存の自動車にも利用できるとする。モーターは大中小の3種類、それぞれ700Nm(ニュートンメートル)クラス、200Nmクラス、50Nmクラスのものを用意し、2輪、4輪、8輪駆動などとすることで、1人乗り小型車から大型バス、トラックにまで対応する。

 SIM-Driveプラットフォームを搭載した場合、従来のエンジンを置き換える形でモーターを積んだ電気自動車と比較してエネルギー損失が少なくなるためエネルギー消費は約半分で済み、同じ容量の電池で走行距離はおよそ2倍になるという。

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