陶製品から空間づくりまで ローランドDGがパウダー3Dプリンタの可能性を提案:TCT Japan 2025
ローランド ディー.ジー.は「TCT Japan 2025」に出展し、セラミックス材料を用いて陶製品などを造形できるパウダー3Dプリンタ「PBシリーズ」を訴求していた。
ローランド ディー.ジー.(以下、ローランドDG)は、3Dプリンティング&AM(アディティブマニュファクチャリング)技術の総合展「TCT Japan 2025」(会期:2025年1月29〜31日/会場:東京ビッグサイト)に出展し、セラミックス材料を用いて陶製品などを造形できるパウダー3Dプリンタ「PBシリーズ」を訴求していた。
PBシリーズは、AGCセラミックスの3Dプリンタ用セラミックス材料「BRIGHTORB」を用いて陶製品を造形できるバインダージェット方式の3Dプリンタで、現在「PB-600」と「PB-400」の2機種をラインアップし、日本、台湾、ASEAN地域での先行販売を行っている。
項目 | PB-600 | PB-400 |
---|---|---|
XY解像度 | 600×600dpi | |
積層ピッチ | 0.1mm | |
造形速度 | 1層当たり35秒 | 1層当たり45秒 |
最大造形サイズ | 595×600×250mm | 390×290×200mm |
装置の外形寸法 | 3150×1344×1900mm | 1709×970×1382mm |
装置の重量 | 1200kg | 430kg |
表1 PB-600/PB-400の主な仕様 |
同社は2022年8月に、AGCセラミックス、中国のアムスキー・テクノロジー(AMSKY)、景徳鎮昌南新区中熙投資パートナー企業(中熙投資公司)とともに、セラミックス材料に対応したバインダージェット方式3Dプリンタ事業に関する合弁会社「微瓷科技(江西)有限公司」を中国・景徳鎮市に設立。中国市場をターゲットに据え、装置開発などを進めてきた。「この取り組みでローランドDGは主に装置開発を担い、合弁会社の『Cerawei』というブランドで製品化し、中国での展開をサポートしてきた。ここでの実績を踏まえ、さらに装置をブラッシュアップし、新たにローランドDGの製品としてPBシリーズをローンチするに至った」(説明員)
中国に引き続き、日本、台湾、ASEAN地域での拡販、さらには欧州での市場拡大を見据え、PBシリーズの展開を進めていくという。「材料については、まずは専用材料としてAGCセラミックスのBRIGHTORBでしっかりと実績を作っていく。将来的にニーズがあれば他の材料のサポートについても検討していきたい」(説明員)
主なターゲットアプリケーションとしては、陶器や陶板の他、陶壁、陶製の内装オブジェ/装飾品の製作、さらには美術工芸品や土器などのレプリカ作成を想定している。
「例えば、伝統工芸の世界であれば、デジタルとの融合によって新たな作品が生まれたり、後継者不足の解消につながったりなど、PBシリーズの活用で得られるメリットが考えられる。さらに、ローランドDGとして狙っているのは、トータルソリューションとしての活用提案だ。われわれが保有するインクジェットプリンタや『DIMENSE』ブランドで展開している壁紙ソリューションなどを組み合わせた、高付加価値をもたらす空間づくりまで視野に入れている」(説明員)
なお、3D CADやCGソフトウェアを用いた3Dデザインから陶製品の完成までの一般的なフローは、(1)3Dデザインの作成→(2)PBシリーズによる造形/3Dプリンティング→(3)パウダー除去→(4)含浸→(5)一次焼成→(6)施釉(せゆう)→(7)二次焼成/完成といった流れとなる。
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