トランプ政権で日米関係はどうなるか:5分で分かる経済安全保障(2/2 ページ)
日本周辺の安全保障環境はいっそう厳しさを増している。日本にとって米国は唯一の同盟国であり、「アメリカファースト」を掲げるトランプ氏であっても日本は米国と良好な関係を維持する必要がある。
トランプ氏を納得させることができるか
石破トランプ関係の行方を懸念する声は少なくない。石破氏は安倍氏のようなゴルフ通ではないとされ、共通の趣味を通して友情を深めることは難しい。直感かつ損得勘定で動くトランプ氏と理屈っぽく理念を重視する石破氏の相性はいまいちとの声も聞かれる。また、石破氏はアジア版NATOの創設を訴えているが、トランプ氏はそもそもNATO軽視の姿勢であり、政策面の考えでも大きな隔たりがありそうだ。
石破氏はトランプ氏から個人的な信頼を獲得する必要があり、日米関係を維持、発展させることが米国の利益になることを具体的に説明するテクニックが求められる。自由や民主主義など抽象的な話をするのではなく、統計や数字など具体的なものを提示し、トランプ氏を納得させることが重要だ。
例えば、ある日本企業がある米国企業を買収すれば、数年でその米国企業は息を吹き返し、新たに数千、数万の雇用が生まれ、従業員の給与もアップする可能性がある……などのように分かりやすく、むしろ日本も商売をしているというような形で接することが重要だ。
しかし、トランプ氏は2024年12月2日、自身のSNSで日本製鉄によるUSスチールの買収計画について、「かつて偉大で強力だったUSスチールが外国企業、今回のケースでは日本製鉄に買収されることに断固として反対する。大統領として私はこの取引を阻止する。買収者は注意するべきだ」と投稿し、日本製鉄による買収問題に強い不満を示したと報じられている(※)。
(※)関連記事:日鉄によるUSスチール買収「阻止する」、トランプ氏が改めて反対表明(ロイター)
日本製鉄によるUSスチールの買収計画は訴訟にも発展している。この問題でさらに火が付くようなことがあれば、日米関係がうまくいかなくなる恐れがあるだけでなく、トランプ氏が日本企業への警戒を強める可能性がある。今後の日本企業と米国企業のM&Aにも悪影響が生じ、日本企業を標的に関税引き上げや買収規制などを強化してくる可能性も排除はできない。
さらに懸念されるのが、石破政権の脆弱さだ。安倍トランプ時代、自公政権は多数与党という状況で政権基盤が安定し、リーダーの安倍氏の下、トランプ氏と安定した日米関係を維持できた。しかし、10月の衆議院議員総選挙の結果、自民党は多数の議席を失い、自公で過半数を握れず、石破政権は少数与党という状況に追い込まれている。与党だけでは法案や予算を成立させることができない状況であり、野党に寄り添わざるを得ない状況だ。
少数与党では過去に1994年に羽田孜氏が首相を務めた羽田政権があったが、発足からわずか2カ月で総辞職に追い込まれた。石破政権が政局の混乱に陥るようなことがあれば、個人的な信頼を重視するトランプ氏との関係構築は難しくなり、日米同盟が停滞する可能性もある。
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