大同特殊鋼は2025年1月15日、高密着性とエッチング性に優れた難密着基板用ターゲット材を開発したと発表した。ターゲット材とは、対象とする電子基板に、原子レベルで金属や合金、金属酸化物等などの物質を付着させ、薄い膜を形成するスパッタリング法に用いられる電子部材だ。
難密着基板用ターゲット材の特徴
難密着基板用ターゲット材を用いてスパッタリング法で成膜した膜は、難密着基板であるポリイミド樹脂に対して高い密着性を実現する。スパッタリング法とは、対象とする電子基板に、原子レベルで金属や合金、金属酸化物などの物質を付着させ、薄い膜を形成するコーティング技術だ。
加えて、銅エッチングに用いる一般的な塩化第二鉄でエッチングが可能なため、3層密着層やシード銅層、めっき銅層の一括エッチングが行える。シード銅層は密着層の上に成膜する銅層で、銅めっきをしやすくするための層で、めっきは対象とする電子基板に金属を化学的に付着させ膜を形成するコーティング技術を指す。
また、この密着膜は配線を形成しやすいため、5Gアンテナや電子デバイスの量産工程の早期立ち上げに貢献する。
同社は、密着性と配線形成のしやすさを両立したターゲット材を新たにラインアップすることで、今後の需要拡大が見込まれる5Gアンテナやインターポーザなどに使われる微細配線基板の分野で、難密着基板用ターゲット材の受注拡大を目指す。
難密着基板用ターゲット材開発の背景
近年、AIやビッグデータなどの情報処理に関する多くのシステムや、自動運転、IoT(モノのインターネット)、5Gなどの新しい技術の普及により、膨大なデータを迅速に処理することが求められている。この要求に応えるため、高性能かつ低消費電力の電子デバイスの需要が高まっている。
5Gのような高周波の伝送では、信号の劣化を防ぐために、伝送経路を短縮させた微細配線が必要になる。さらに、伝送ロスを減らすために、ポリイミド樹脂などの低誘電基板の適用が進んでいるが、配線材料である銅は、基板との密着性が低く、断線のリスクが高いため密着膜が必要とされている。
これまで密着膜には、一般的にチタン膜が使用されていたが、チタン膜は、銅と同じエッチング液で配線が形成できないため、2回のエッチング工程が必要になる。そこで大同特殊鋼は、難密着基板に対して密着性が高く、かつ一般的なエッチング液で銅配線と一括エッチングが可能な密着膜を開発した。
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