電動車の購入意向を調査、25カ国1万6000人の消費者が回答:電動化(5/5 ページ)
アーサー・ディ・リトル・ジャパンは自動車分野のメディアラウンドテーブルを開き、消費者調査「自動車モビリティの未来」の最新版について説明した。
中国は景気刺激策に注力
中国政府は、トランプ政権の誕生を踏まえて景気刺激策を強化していく方針だ。2024年と同等の自動車需要を維持すると見込まれている。中国では、エンジン車や新エネルギー車を幅広く対象にした買い替え促進策が成功し、下げ止まっていた年間生産台数が上昇。中国国内の需要は1年程度持ち直していくと見込んでいる。パワートレイン別では、EVからPHEVなど他のパワートレインへの切り替えが進展し、PHEVの比率が高まっている。
足元では、欧州の追加関税などの影響を受けて、輸出台数は減少しているが、中国が輸出拠点として活用されるトレンドは2030年まで中期的に継続すると見込む。インドも輸出拠点化が進むとしている。
ただ、中国の自動車メーカーの中でも明暗が分かれ始めている。中国国外での存在感を高める上で、グローバル展開やPHEVの競争力が重要なポイントになりそうだ。グローバル展開においては、現地生産でサプライチェーンを構築し、安定生産まで到達している自動車メーカーは限定的だとしている。BYDと吉利汽車の実質的な2強体制だ。
苦境の欧州勢はもうベンチマーク対象ではない?
欧州ではEV市場が停滞し、中国では価格競争が激しい。欧州と中国の両方で新車を販売する欧州系の自動車メーカーは最も苦しい立場に置かれている。日系自動車メーカーはEV一辺倒ではない“マルチパスウェイ”戦略を維持しているが、EV重視で積極的に投資してきた欧米自動車メーカーはEVの需要鈍化を受けて目標値を撤回したり投資を後ろ倒ししたりしている。
日米欧韓の自動車メーカーは欧州のCO2規制にも苦しめられている。業界団体を通じて後ろ倒しを要望しながら、実際の対応は中国系と協力するか、マルチパスウェイに転換するかで二分している。伝統的な自動車メーカー同士の連合だけでなく、新興EVメーカーとの協業や出資などの関係構築の動きも加速している。
岡田氏は「CO2規制が厳格化されれば、欧州の自動車メーカーがこれまで以上に総崩れになる可能性が高い。日系自動車メーカーからすると、欧州自動車メーカーは、もはやベンチマークの対象ではないところまで落ち込んでいるのではないか。欧州勢の失敗からうまく学びながら、中国や米国、グローバルサウスにどう展開するかを慎重に見極めていくべきだ」と語った。
欧州が仕掛けた電池を中心とした産業振興は思惑通りに進んでおらず、中国系や韓国系への依存度は高まる一方だとしている。
欧州ではサーキュラーエコノミーやバッテリーパスポートなど幅広い規制が施行されている。電池以外も含めた戦略や法が展開されており、パブリックコメントなどでは電池にとどまらず、エネルギー関連で広く働きかけが求められる。中国勢は、国際標準に向けた働きかけの一方で欧州の電池規制への対応を進めている。例えば、CATLは自家発電やPPA、グリーン証書を活用することで欧州の生産拠点をグリーン化する。国の働きかけと民間の推進力のバランスが取れているという。
ガラパゴスな規制にならないよう注意を
カーボンニュートラル燃料の持続的なビジネスモデル構築には、規制や補助金だけでなく、運用の負担に配慮した環境価値認証制度も求められる。B2B、B2Cの両方で需要家が環境価値に価格を支払う仕組みや社会を作っていく必要がある。日本でも海外のルールと足並みをそろえ、CO2削減効果が国際的に認められるようにしていくことも重要だ。
岡田氏は日本の規制のガラパゴス化に対する懸念を示した。「CO2の排出量取引でも、他国はスコープ1/2の比率が小さい業界を対象に含めないが、日本は全て対象にすることで業界に重荷を背負わせている。欧州を模倣し、欧州よりも厳しい政策を入れるようなところも出てきている。日本企業のためになるかという視点が重要だ」(岡田氏)
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