サステナビリティの「2026年問題」 単なる情報開示の先のSX経営を実現できるか:脱炭素
booost technologiesはサステナビリティの情報開示義務化に伴い国内企業が立ち向かわなければならない課題の解決に向けたプロジェクトを開始すると発表した。
booost technologiesは2024年11月28日、サステナビリティの情報開示義務化に伴い国内企業が立ち向かわなければならない課題の解決に向けたプロジェクトを開始すると発表した。サステナビリティ担当者向けの勉強会や、サステナビリティ経営に向けたデータの活用方法などを共有し合う経営者向けラウンドテーブルなどを開催する。
「正確さ」「早さ」「広さ」の課題解決を
現在、booost technologiesはサステナビリティ情報開示の義務化に伴い求められる対策への企業認知が足りておらず、企業価値の低下につながりかねない問題群を「サステナビリティ 2026問題」と呼び、対策を推進している。
ここで言う「2026」とは、2026年4月に始まる2027年3月期から東証プライム市場に上場する時価総額3兆円以上の企業に対して有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示が義務化されることに由来する。有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示が従来の任意開示と異なる点について、booost technologies 代表取締役の青井宏憲氏は、「『正確さ』『早さ』『広さ』の3つで違った対応が求められる。財務情報と同等の信頼性と開示スピードが必要で、さらにESG(環境、社会、ガバナンス)といった多岐にわたるデータを網羅し、グローバルで収集する必要がある」と指摘する。
有価証券報告書における情報開示義務化は日本のSSBJ(サステナビリティ基準委員会)が検討しているものだが、この他にもグローバル企業であれば欧州のCSRD(企業サステナビリティ報告指令)やESRS(欧州サステナビリティ報告基準)への対応も求められる。この中で企業は、グローバルでのサステナビリティデータマネジメントのプロセス構築や、全社横断での推進体制の構築、財務情報と同水準の合理的な保証、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)のためのITシステム構築、内部統制の強化などが求められる。
しかし、国内では対策が進んでいない企業が多くある。booost technologiesが実施した調査では、東証プライム上場企業の経営者の約70%、サステナビリティ担当者の約90%課題を感じている。経営者とサステナビリティ担当者はともに「サステナビリティ経営に対する社内認知度の向上」や「サステナビリティ専門人材の不足」「データ収集力や経営への利活用の不足」などを課題として挙げている。また、サステナビリティ担当者は「サステナビリティ情報を会社の経営判断に生かす」ことを急務の課題として取り上げている。
booost technologiesはこうした課題の解決のためには、個社でなく日本全体で早期にSXに取り組み始め、事業部やグループ会社、サプライヤーなどステークホルダーを巻き込むとともに、SXと事業計画を接続し、経営価値向上のためのサステナビリティデータ活用を実現するSX人材の育成が欠かせないと指摘する。これらを実現するために、同社が立ち上げたのが「日本をSX先進国へ」プロジェクトだ。
プロジェクトではサステナビリティ担当者向けのコミュニティーや勉強会の実施に加えて、経営者などエグゼクティブ向けにサステナビリティ先進企業を招いたラウンドテーブルなどを開催する。ラウンドテーブルの対象はCxOレベルを想定し、サステナビリティの情報開示への対応やサステナビリティ経営を推進する上での取り組み方について、参加者同士で情報共有し、議論する場としていく。いずれの取り組みも、2025年1月以降に順次展開する。
青井氏は「サステナビリティ情報開示では非財務データをグローバルで収集しなければならないことなどに注目が集まっているが、大事なことはそれだけではない。サステナビリティデータを企業価値向上や事業価値の変革に繋げていく必要がある。直近の開示の義務化をSXを加速する機会と捉えられるか。2026年が1つの大きな分岐点になる」と語った。
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