中国で急成長するEREVはグローバル自動車市場の“本命”になり得るか:和田憲一郎の電動化新時代!(54)(2/3 ページ)
EVシフトが著しい中国で急激に販売を伸ばしているのがレンジエクステンダーを搭載するEREV(Extended Range Electric Vehicle)である。なぜ今、BEVが普及する中国の自動車市場でEREVが急成長しているのだろうか。さらには、中国のみならず、グローバル自動車市場の“本命”になり得るのだろうか。
追随する自動車メーカーも現れた。代表的なのは、ファーウェイによる電気自動車ブランドAITO(アイト)であろうか。2021年よりEREVの「M5」「M7」「M9」などを順次発売している。
他の自動車メーカーもEREVに着目し始めた。小鵬汽車は2025年下半期にSUVタイプのEREVを量産することを公表。上海汽車とフォルクスワーゲンの合弁会社である上汽VWは、2024年9月の成都モーターショーにおいて、Bセグメント市場向けのEREVと、Aセグメント市場向けのPHEVの2車種を開発中であることを明らかにした。
これら以外でも、韓国現代自動車(Hyundai Motor)が2024年8月の「2024 CEO Investor Day」において、2026年末までに北米と中国でEREVの量産を開始すると発表した。米国フォード(Ford Motor)や欧米大手のステランティス(Stellantis)も、EREVを欧州市場に投入予定であると報じられている。
なぜ今、EREVなのか
ここにきて、なぜEREVが急激に販売を伸ばしているのであろうか。BEVの最大の課題は走行距離にある。走行距離を長くしようとすれば、バッテリーを大容量化しなければならず、車両価格が高くなる。そのため、各自動車メーカーは、車両価格と走行距離のバランスをどう取るか苦心している。
初期のBEVは走行距離が200〜300kmだったが、最近では400〜500kmのものが多くなってきている。しかしそれでも、充電インフラが不足している地域もあって、長時間の走行に不安を感じるユーザーも多いであろう。
EVシフトが進む中国では、上述の通り、2024年1〜11月の新エネ車国内販売台数は1070万台となっており、国内新車販売台数2260万台の内、既に47%に達している。これは、2023年の新車販売比率32%から大幅に上昇しており、いわゆる「イノベーター理論」で考えると、アーリーマジョリティー後半に突入していることを意味する。
つまり、これまで新エネ車のシステムに関してある程度知識を持っていたユーザーから、一般的な自動車ユーザーの領域に入っていると言える。ということは、一般ユーザーが新エネ車の購入を検討する際に、BEVの電欠の懸念に対する“保険”になり得るレンジエクステンダーを搭載するEREVを購入する層が増えているのではないだろうか。もちろん、通常のPHEVを選ぶユーザーも多いと思われるが、EREVを販売する自動車メーカーやその車種が増加していることも、急成長の一因であろう。
このような現象は、新エネ車の新車販売比率20%となる欧州でも、ますますこの傾向が出てくるのではないだろうか。フォード・モーターやステランティスがEREVを欧州市場に投入準備していることは、このようなトレンドの変化を感じての戦略であろう。
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