検索
連載

「工程仕掛かり分析」と「製品在庫分析」で無駄を減らし生産プロセスを最適化する現場改善を定量化する分析手法とは(11)(3/3 ページ)

工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第11回は、無駄を減らし生産プロセスを最適化することが可能な「工程仕掛かり分析」と「製品在庫分析」について説明します。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

2.4 製品在庫の数量分析の手順

 以下は、製品在庫の真の原因を追及するために、どの位の製品数量が在庫されているのかを分析する手順を示したものです。

  • (1)分析目的の明確化
    例えば、改善目的が単に製品在庫の削減なのか、流通拠点の集約化にあるのかなどを明確にして、それに適した分析計画を立案します
  • (2)製品在庫の実態分析
    まず、品種別、販売数に季節変動がある場合は、月別や保管場所別などで分析します。分析日は在庫の平均実態を表している日を選びます。場合によっては月の上旬、中旬、下旬の製品在庫量を調べて、3回の平均を分析する場合もあります。図2に、「仕掛かり品/製品在庫の停滞数量調査表」の例を参考までに示しておきました
図2
図2 仕掛かり品/製品在庫の停滞数量調査票(例)
  • (3)製品在庫は単独の分析では改善につながりません。品種別の月別販売数や、生産数との関係を分析することが必要になりますので、それらのデータも同時に分析します
  • (4)販売数と製品在庫数や、生産リードタイムと製品在庫数など、2つの値の間に関連性が認められる場合には相関関係をグラフに描いて数値解析をしてみます。さらに、相関関係を考察して、現状の製品在庫の状態について真の原因を追及していきます

2.5 品種ファミリーの考え方

 品種ごとの分析は多大な分析工数を必要とし、必ずしも改善案の立案に役立つ分析とはいえない場合があります。生産方式別や使用材料別など適切な品種ファミリー区分を設定して、分析工数の短縮と改善効果の最大化を図る必要があります。

2.6 製品在庫の保管状態の分析

 効率的な在庫管理がなされているかどうかを示す“管理レベル”の分析として、製品在庫の保管状態の分析を行い、在庫管理の実態を把握します。

  • (1)表示の状態
    在庫されている状態が1日で分かるように、品種/品目、製品在庫の数量、在庫理由などが表示されているか
  • (2)記録の状態
    製品在庫の状況が生産管理情報として、日々きちんと記録されているか
  • (3)保管の状態
    製品在庫の保管場所や保管方法、製品在庫の管理責任者、保管期限などの製品在庫に関する管理ルールが規定され実行されているか
  • (4)運搬の状態
    製品の入庫や在庫品の出庫手段とそのタイミング、製品在庫量の上限と下限の数量などのルールが規定されて実行されているか

◇     ◇     ◇     ◇

 工程や作業の始めから終わりまでの所要時間(リードタイム)と仕掛かり量は密接な関係にあります。リトルの法則(Little's Law)という有名な理論があり、“仕掛かり量=リードタイム×処理速度”で表されます。つまり、リードタイムを短縮するためには、仕掛かり量を適切に管理することが必要であるということです。

 仕掛かり量は、前述の通り製造過程でまだ完成品には至っていない製品や部品の量をいいますが、生産工程にボトルネックが発生している場合は仕掛かり量が増加します。また、仕掛かり量が日常的に管理され一定の水準に保たれていれば、効率的なプロセスが維持されますが、過剰な仕掛かり量は無駄を生む元凶となります。

 リードタイムは、製造業では手配番数、先行日数、基準日程などと表現することもあります。リードタイムは、生産スピードや顧客への納品速度を評価する上で非常に重要です。リードタイムが短いと迅速に商品を提供でき、顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)が向上します。また、仕掛かり量が多くなるとリードタイムが長くなり、生産効率が低下します。

 以上の理由から、仕掛かり量とリードタイムを効果的に管理することで効率的な生産が可能となり、コスト削減や顧客のニーズに迅速に応えられる上に納期順守も達成できます。仕掛かり品や製品在庫は変動費として収益に大きく影響を及ぼすことを考えれば、財務会計においても重要な意味を持つことを理解していただけるのではないでしょうか。

筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る