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「工程仕掛かり分析」と「製品在庫分析」で無駄を減らし生産プロセスを最適化する現場改善を定量化する分析手法とは(11)(2/3 ページ)

工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第11回は、無駄を減らし生産プロセスを最適化することが可能な「工程仕掛かり分析」と「製品在庫分析」について説明します。

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2.製品在庫の分析

 製品在庫分析は、製品在庫を効率的に管理し、過剰在庫や在庫の不足を防ぐために行うプロセスです。これにより、コスト削減や顧客満足度の向上を図ることができます。具体的には、以下に挙げるポイントを含めて推進していきます。このような分析を行うことで、企業は在庫管理の効率を高め、利益を最大化できます。

 製品在庫の分析は、製品の在庫レベルや在庫回転率、需要予測などを分析するプロセスです。適切な在庫分析を行うことで、過剰在庫や品切れのリスクを最小限に抑え、コスト削減や販売機会の最大化を実現できます。これらの指標を用いた在庫分析を定期的に行うことで、在庫管理を効率化し販売機会を増やしながら、在庫品の管理費用などを削減できます。

  • (1)製品在庫レベルの監視
    在庫の現在の状態をリアルタイムで把握していきます。平均在庫量がどれくらいの期間保管されているのかを基に在庫日数などを把握します。長期間在庫がある場合は、回転が遅く効率が悪い可能性があります
  • (2)在庫の需要予測
    未来の需要を予測し、適切な在庫量を確保します。在庫の入れ替わり頻度を測定し、製品の需要に応じた適正な在庫レベルかどうかを評価します
    • 過去の販売実績や季節性のデータを基に、需要予測を行う
    • 生産データなどの時系列データを分析し、予測するために用いられる時系列予測統計モデルのARIMA(Auto Regressive Integrated Moving Average)や過去の受注実績データを基に将来の受注予測を行うLSTM(Long Short Term Memory)などの時系列予測モデルを用いて、需要の変動を予測し、適切な在庫を確保する
  • (3)在庫量の管理基準の設定
    製品在庫の管理基準量を決定し、在庫費用を最小限に抑えます
  • (4)在庫の回転率分析
    製品在庫がどれだけ頻繁に売れているかを分析します。在庫の入れ替わり頻度を測定し、製品の需要に応じた在庫レベルか否かを評価します
    (在庫回転率=期間出庫数÷期間平均在庫数)
  • (5)在庫コストの分析
    • 保管コスト: 倉庫での保管に要する費用
    • 注文コスト: 製品の発注に要する費用
    • 機会コスト: 欠品により失われた販売機会の損失
  • (6)ABC分析(製品カテゴリー分け)
    売上や需要の高い製品(Aランク)、中程度の製品(Bランク)、需要が低い製品(Cランク)に分類し、それぞれの製品に適した在庫管理戦略を策定します。ABC分析は、製品を重要度別に、例えば最も回転率の高いものをAランク、Aランクよりも回転率が低いものをBランク、回転率の低いCランクに分け、各グループで管理方法を変えることによって、在庫不足や在庫過多のリスクを軽減する手法です。このように、在庫管理を効率化するためには、ABC分析に基づき、製品ごとに再発注の基準を設けることが重要です
  • (7)セーフティストックとリオーダーポイントの設定
    • セーフティストック(Safety Stock:安全在庫)
      需要の変動やリードタイムの変化に備えた安全在庫の量を決める
    • リオーダーポイント(Reorder Point:再発注点)
      在庫量が、ある一定レベルに達した時点で、追加発注をかけるタイミングを決定する
  • (8)KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)による分析
    納期遅延率、売上対在庫比率、在庫の鮮度(回転率)などのKPIを設定し、在庫のパフォーマンスをモニタリングします

2.1 定義と用途

 製品在庫の削減を目的として、工場の完成品在庫から流通在庫に至るまでの全ての製品在庫について、品種別、月別に在庫数と金額を分析する手法です。

 顧客の立場での欠品の防止と生産者の立場での在庫の削減は相反します。つまり、顧客からの「製品が早く欲しい」という要望に応えていくためには、製品あるいは半完成品の在庫をある程度ストックしておく必要があります。この場合、工場では製品や半完成品の在庫量が増える結果となります。また、その改善策として必要以上に在庫量を減らしてしまうと欠品のリスクが発生し、顧客の要求する時期に要求された数量を納品できないという事態を招いてしまうかもしれません。従って、販売戦略に適合した製品在庫の分析と改善が最重要課題となります。

 製品在庫分析の目的としては、製品在庫の削減、製品の陳腐化防止、不良資産の削減、流通経費の削減、製品の保管スペースの最少化、生産体質の強化、品切れの防止などが挙げられます。

2.2 製品在庫分析の対象範囲

 製品在庫分析の対象範囲は、工場の完成品在庫から流通在庫までの製品在庫を分析対象範囲とすると前述しましたが、その範囲は図1のようになります。

図1
図1 製品在庫分析の対象範囲

2.3 製品在庫の状態区分値の設定

 製品在庫分析に当たっては、まず状態区分を設定する必要があります。正常在庫や異常在庫、過剰在庫の区分は、販売戦略と製品の生産リードタイム(Lead Time:工程や作業の始めから終わりまでにかかる所要時間)によって異なるため、自社に適合した区分の数値にします。

 正常在庫であれば1カ月分の在庫であっても、次々と出荷されていくので生産方式との関係で必ずしも悪い結果とはいえません。例えば、リードタイムの短い生産方式に改善された場合には、基準値そのものを変更する必要があります。在庫状態区分の例は以下の通りです。

  • (1)正常在庫:生産リードタイム内で出荷される在庫
  • (2)異常在庫:生産リードタイムの1.5倍から2.0倍の日数が停滞
  • (3)過剰在庫:生産リードタイムの2.0倍以上の日数が停滞

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