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CAEの最新動向を5つのキーワードで読み解くテルえもんが見たデジタルモノづくり最前線(8)(3/3 ページ)

連載「テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線」では、筆者が日々ウォッチしているニュースや見聞きした話題、企業リリース、実体験などを基に、コラム形式でデジタルモノづくりの魅力や可能性を発信していきます。連載第8回は「CAEの最新動向」について取り上げます。

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5.デジタルツイン

 デジタルツインとは、現実世界の製品やシステムを仮想空間上に再現したものです。実機とデジタルモデルをリアルタイムで連動させ、シミュレーションとフィードバックを同時に行います。CAEはデジタルツインの構築に不可欠な技術であり、デジタルツインの活用により、製品のライフサイクル全体にわたる最適化が可能になります。実際の製品とデジタルモデルを同期させ、運用中の製品の状態をリアルタイムで監視し、故障の予防やメンテナンスの最適化を行います。

 例として、DICと日立製作所は、合成樹脂製造プラントの運転自動化を図るデジタルツイン技術として、プロセスインフォマティクスを活用したシステムを実用化しています。

動向のまとめと必要な人材育成について

 近年のCAE分野では、技術革新と市場ニーズの高まりを背景に、多くの新しい潮流が生まれています。特に、AIや機械学習(ML)の活用が注目されており、設計の最適化、シミュレーションの高速化、予測精度の向上に貢献しています。また、クラウド技術の普及により、クラウドCAEが一般化しつつあり、オンデマンドで高性能リソースを利用することで、中小企業でも高度な解析が可能となっています。

 さらに、デジタルツインの導入が進み、実世界のデータを基にリアルタイムで製品やシステムを模倣することで、設計から運用までのプロセスが革新されています。これに加えて、マルチフィジックス解析の需要が拡大しており、複数の物理現象が相互作用する複雑なシステムをシミュレーションする技術が、より高精度で提供されています。

 また、自動運転車や電動化技術の進展に伴い、CAEの適用範囲は従来の製造業を超え、新エネルギー分野や医療分野にも拡大しています。これらの動向は、開発コストの削減、品質の向上、開発スピードの加速を実現し、重要な技術基盤としてのCAEの地位を確立しています。

 CAEは今後もAIやIoT(モノのインターネット)、データ分析技術などと連携し、シミュレーション技術のさらなる進化を促進することが期待されています。そのような時代の中で、日々、進化するCAEを活用するための人材育成が重要となってきます。

 CAEソフトウェアの操作方法の習得だけでなく、材料力学をはじめとする工学知識や有限要素法(FEM)の知識を身に付けることが重要です。実践的なスキル習得には、実務経験を通して問題解決能力を養うこと、過去の事例研究による分析力の向上、そして、円滑なコミュニケーション能力の育成が欠かせません。

 さらに、AI/ML、クラウドCAE、プログラミングといった最新技術への対応も急務です。これらの技術を理解し、活用することで、CAEの効率化や高度化を図ることができます。CAEは単なる解析ツールではなく、製品開発を効率化し、競争力を強化するための戦略的なツールであるという認識を共有することで、人材育成の効果を高めることができます。

 CAE人材育成は、企業の競争力強化に直結する重要な投資です。効果的な人材育成プログラムを構築し、優秀なCAEエンジニアを育成することで、企業はより高品質で革新的な製品を開発できるようになり、市場での優位性をより一層高めることができるでしょう。 (次回へ続く)

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筆者プロフィール

小原照記(おばら てるき)

いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。


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