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有田焼の文房具やカトラリー 器だけじゃない、文翔窯のひと味違うモノづくりワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(19)(3/4 ページ)

本連載では、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。第19回では佐賀県伊万里市と有田町の窯元の若手経営者や後継者などで結成したNEXTRADのメンバーで、文翔窯の代表である森田文一郎氏に話を聞きました。

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焼きものを異素材と組み合わせる難しさ

手書きで絵付けしたボールペン
手書きで絵付けしたボールペン[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞

ーー最近の主力商品はこのボールペンなのですか?

森田さん そうですね。一つ一つ手書きで絵付けをしていて、市販のボールペンのインクを繰り返し使えるようになっています。このボールペンは親父の代からあるので、20年くらい前から作っているはずです。記念品などとしてまとめて注文をいただくこともあります。コンセントカバーと同様、このボールペンも家にずっとありました。

ーー森田さんが、ミーティング中にメモを取る際にもこのボールペンを使われているのを拝見して、有田焼のボールペンを日常的に使えるなんていいなと思っていました。では次に、カトラリーをはじめとした、焼きものと異素材の組み合わせについても教えてください。焼きものと金属を組み合わせるというのはとても難しそうに見えるのですが、一体どのように行うのですか?

有田焼のカトラリー
有田焼のカトラリー[クリックして拡大] 出所:文翔窯

森田さん そもそも焼きものは、乾燥や焼成によって生地の水分量が変化し、必ず収縮します。食器を作るときには曲がりや収縮の度合いに違いがあっても商品の仕様上、特に問題はありませんが、異素材と接合する際には、焼いた後の曲がりや収縮率はとてもシビアに見ないといけないものなんです。

 ボールペンの持ち手の部分が曲がって焼き上がってしまったら、ペンのインクを差し込むことができなくなります。収縮を勘案して、時には0.1ミリ単位まで調整が必要なこともあります。泥漿(でいしょう:粘土に水を加えた泥状のもの)の水分量や、泥漿を流し込む型のサイズ、型を使用する回数や、その日の湿度などによって変化する焼き上がり際の収縮を見越して動かないと、想定外のサイズで焼き上がってしまいます。収縮しない焼きものがあれば良いのに、と思うこともあります(笑)。

ーーすでにサイズが決まっている金属と接合する部分があることや、真っすぐなものを中に入れることを考えると、ミリ単位のズレやちょっとの曲がりが命取りになるというのがよく理解できました。カトラリーの金属部分はどのように調達されているのですか?

森田さん 小ロットの注文が可能な金属製品の卸会社から購入しています。既製品を小ロットで買える間は問題ないけれど、それがある日突然廃番になってしまうと、その先はもう商品を作れなくなります。最近スプーンが廃盤になってしまったので、もう新規では生産できません。今ある100個くらいの在庫で最後です……。

手にとってもらえる店舗に商品を届けたい

ーー現在商品を買うことができるのは文翔窯のECサイトの他にはあるのでしょうか?

森田さん あまりないです。いくつかのショップの一角に置いてもらっているのですが、手にとってもらえる場所があまり多くないことは課題だと感じています。本当は、欲を言えば自社店舗を東京に持ちたいです。自分が作ったものをたくさんの人に見てもらえる場所に置きたいけれど、今すぐに自社店舗を持つのは難しいかもしれません。展示会に出たりしながら、ご縁があれば都市部のちょっといい文房具を扱うお店とかに置いてもらいたいなと思います。

ーーそうなのですね。今後出展が決まっている展示会はありますか?

森田さん 2024年12月に「文具女子博2024」に出展する予定です。作っているものを知ってもらうためには、まずは動かなければいけないと思っています。ただ、生産の大部分は僕1人で行っているので、自分が出展などのために1週間も窯を離れると、その分生産が止まってしまいます。ですので、なかなか頻繁には展示会などに出られません。モノを作ることに集中しながら、商品を手に取ってもらえる場所も持てたら一番良いんですけどね。

※MONOist編集注:神奈川県横浜市、パシフィコ横浜で開催予定

文翔窯の製品
文翔窯の製品[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞

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