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フリーソフトでボルトの疲労破断の有無を予測するCAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる(18)(5/6 ページ)

金属疲労を起こした際にかかる対策コストは膨大なものになる。連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」では、CAEを正しく使いこなし、その解析結果から疲労破壊の有無を予測するアプローチを解説する。連載第18回では、フリーのFEMソフト「LISA」で疲労破断の有無を予測できないか考える。

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STLファイルの作成

 トポロジー最適化ソフトを作るのだったら、最適化結果をSTL形式で出力し、他の3D CADで読み込めるようにしたいですね。その手順を述べます。

 3D CADによる立体の定義方法ですが、多くは「B-reps(boundary representation)」と呼ばれる方法で行われています。物体の中と物体の外の境界は必ず面があるはずなので、この面(境界面)の集合で物体を表現できます。このような物体の定義方法をB-repsと言います。初めてこの言葉を知ったのは、米国のSDRC(Structural Dynamics Research Corporation)が「GEOMOD」というソリッドモデラーを発表したときでした。SDRCは“CAE(Computer Aided Engineering)”という用語を初めて使った会社だったと記憶しています。今でいう3D CADですが、コンピュータ上で立体の切った貼ったができることはちょっとしたカルチャーショックでした。図21にB-repsのイメージを示します。

B-repsによる立体の表現方法
図21 B-repsによる立体の表現方法[クリックで拡大]

 STL形式はB-reps方式で立体を表現します。図22にSTL形式のイメージを示します。STL形式では曲面を使わずに三角形の面だけを使います。面の数が非常に多くなりました。円弧面などは多角形近似となります。

STL形式
図22 STL形式[クリックで拡大]

 トポロジー最適化の結果をSTL形式に変換する場合、それぞれの要素が持つ密度という属性を使って境界面を作ります。図23にトポロジー最適化に使用した要素と節点、各節点の密度値および境界面を示します。密度は要素の属性だったのですが、連載第5回で説明した要素解と節点解の関係と同じ考え方で、各節点にも密度値を割り当てました。

各節点の密度と境界面の位置
図23 各節点の密度と境界面の位置[クリックで拡大]

 境界面の密度値を0.5[-]としましょう。図23のA点に注目します。A点は節点iと節点jをつなぐ線上にあります。節点iの密度値は0.1[-]、節点jの密度値は0.8[-]、境界面の密度値は0.5[-]とすると、密度値の比から線形補間でA点の座標値が決まります。A点のような中間点をつなぐことで境界面を作ることができます。図24に、このようにして作った境界面を示します。もともと四面体要素なので境界面は必ず三角形になってくれます。

境界面
図24 境界面[クリックで拡大]

 図23において、物体内部はρ≧0.5[-]、物体外部はρ<0.5[-]だということは、図23の状態では物体の形状は密度値で決まっています。つまり、密度がある値以上の点は物体の内側となります。この考え方はコンピュータグラフィックスの黎明(れいめい)期に使われていた「メタボール」による物体の定義方法となります。映画『ターミネーター2』に登場する液体金属製の敵ロボットはメタボールですね。図25にメタボールによる物体定義方法を示します。例えば、式8のような形で座標の関数として密度を定義します。

メタボールによる物体定義方法
図25 メタボールによる物体定義方法[クリックで拡大]
式8
式8

 図26にx軸上の密度の変化を示します。

x軸上の密度の変化
図26 x軸上の密度の変化[クリックで拡大]

 ではあと1つ密度を定義して足し算しましょう(式9)。

式9
式9[クリックで拡大]

 図27にx軸上の密度の変化を示します。

x軸上の密度の変化
図27 x軸上の密度の変化[クリックで拡大]

 では、式9で定義された物体はというと、図28のようになります。プニュっと引っ付きました。

密度で形状を定義した例
図28 密度で形状を定義した例[クリックで拡大]

 物体の陰影の表現のためには表面の外向き法線ベクトルを求める必要があります。式10で求められます(参考文献[1])。

式10
式10

 太字はベクトルを表し、iはx軸と同じ方向を向く大きさ1のベクトル(基底ベクトル)、逆三角はハミルトン演算子でした。

参考文献:

  • [1]矢野健太郎|解析学概論|裳華房(S53)

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