“車輪の再発明”に本気で取り組むソニーG、段差に強い新たな車輪機構を披露:ロボット開発ニュース(1/2 ページ)
ソニーグループは、「建設RXコンソーシアム エキシビション 2024」において、2024年10月に発表した、段差に強いオムニボール型ロボット移動機構の進化版を披露した。
ソニーグループは2024年11月27〜28日に都内で開催された「建設RXコンソーシアム エキシビション 2024」(品川インターシティホール)において、同年10月に発表した段差に強いオムニボール型ロボット移動機構の進化版を披露した。
ロボットの移動機構の新構造を開発
ソニーグループでは、以前からロボットの活用シーンを広げる新たな移動技術として、安全で高効率な移動を可能にするロボティクス技術「Tachyon(タキオン)」の開発に取り組んできた。その中で、2024年10月にロボットの移動機構に関する5本の論文がAI(人工知能)、ロボティクス分野の国際学会「IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS)2024」において採択されるなど、研究開発を積み重ねてきている。
その中でも注目を集めたのが「受動変形構造を持つ全方位球面車輪の開発」として発表された、自動で形状を変更することで段差を乗り越えることができるモーター内蔵型の全方位車輪だ。
ソニーグループ 事業開発プラットフォーム 技術開発部門 モーションAI開発部 2課 技術士の本郷一生氏は「踏破性の高いロボットの移動機構としてはオムニホイールやメカナムホイールなどがあるが、これは進行方向に平行な段差を乗り越えることができない課題があった。これを解決するものとして半球を2つ組み合わせた球状のオムニボールが期待されてきたが、これは形状的に耐久力などに課題があった。開発した機構はこれらを解決したものだ」と述べる。
開発された受動変更構造を持つ全方位球面車輪は、オムニボールの構造から発展させ、球状の構造を3つに分割し、段差にぶつかればその3つの構造がスライドして段差部分に引っ掛かることで、段差踏破性能を高めた点が特徴だ。この受動スライド構造により従来のオムニボール構造では直径の29%の段差が越えられたが、新構造では直径の35%の段差を越えられるようになった。さらに、3つの球状形状を組み合わせることで中央にスペースを作ることができ、車輪の支持強度を高められる他、インホイールモーターの内蔵スペースも確保できる。
ただ、この機構はスライド機構がある分、機構が複雑になりコストが高くなる他、ばねの耐久性などの問題もあり、実用化までにさまざまな障壁があった。そこで、新たな構造の開発に取り組み、それを建設RXコンソーシアム エキシビション 2024で披露した。
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