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踊り場を迎えるサービスロボット【後編】〜現場への導入を進める4つの施策とは〜転換点を迎えるロボット市場を読み解く(3)(3/4 ページ)

転換点を迎えるロボット市場の現状と今後の見通し、ロボット活用拡大のカギについて取り上げる本連載。第3回は、現場へのサービスロボットの導入を進めるための4つの施策について解説する。

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サービスロボットの効果を最大化する施策検討のポイント

 ここからは、サービスグランドデザインやサービス&オペレーションデザインで重要な役割を果たす、サービスロボットの効果を最大化する施策検討で重要になるポイントを3つお伝えする。「サービスの在庫化/定型化」「実現ステップ」「現場と経営幹部を巻き込んだチーム組成」である。

サービスの在庫化/定型化

 まずは「サービスの在庫化/定型化」についてだ。良い施策かどうかは、ロボットが通常時においても、繁忙期などの通常時以外においても活躍できることが問われる。サービス業においては、従業員はマルチタスクであることが多く、時間帯や混雑状況に応じて業務が変化するため、ロボットによる省人化を検討する際にロボット1台にさまざまな機能を要求しがちになる。

 確かにロボットが繁忙時間/時期しか使えない、もしくはその逆の通常時しか使えないようでは真の効果は得られない。そこで大切なのが、提供するサービスの在庫化ができないか、顧客へのサービス提供を定型化できないかという論点だ。

 在庫化とは、サービス提供するタイミングをサービス提供者側でコントロールすることだ。例えば提供する料理を事前に仕込んでおくことなどもサービスの在庫化と言える。

 次に定型化だが、ロボットに対応させる業務を定型化できず、あらゆる可能性を網羅的に抽出し要件に反映させた場合、限定的にしか利用されない機能があふれ、高額なロボットとなる。一方で、定型化が困難、また定型化しない方がよいサービス/業務も存在する。どのサービス/業務を、どの程度定型化させるべきなのか、これを定義する際の重要な論点として、ターゲット顧客が抱くサービスへの期待が挙げられる。「このサービス業態で、このブランドならここまでのサービスを提供してくれるだろう」という顧客の事前期待を分析し、グランドデザインやターゲット顧客に照らして押さえておくべきサービス/業務を把握し、定型化する範囲や領域を見極めることが重要となる。

実現ステップ

 続いて「実現ステップ」について。ロボットの導入を進める中で、手が足りないから対応できないと現場から反発を受けることは少なくないだろう。人とロボットが協働するグランドデザインの実現は一足飛びにできるものではない。まずは従業員の時間を作るところから始め、グランドデザインの実現に向けたサービス/業務の改革へとステップアップすることが重要となる。

 従業員の時間確保に向けた施策はロボット活用だけにとどまらないが、顧客が介在しない裏方業務は定型化が可能な業務が多いため、ロボット活用の検討が進めやすい。また、裏方業務からロボットの活用を進めることで従業員がロボットを受け入れ、ロボットに慣れていく中で、ロボットの得意/不得意への理解が深まる。これはロボットを活用したサービス/業務の変革を推進する上で追い風となるケースがあり、重要なポイントと考えている。

現場と経営幹部を巻き込んだチーム組成

 最後に、「現場と経営幹部を巻き込んだチーム組成」について説明する。

 グランドデザインの実現に基づいたロボットの導入/活用を推進するには、経営サイドのコミットメントと、一時的な負担を伴いながらも改善を推進する現場サイドの強い意志が必要になる。

 これまで支援に携わった企業の中では、経営幹部の強い推進力で現場改善に向けた新サービスと機材の導入を進めたが、現場では重要性と必要性がうまく浸透せず、導入された機材が放置されていた光景を見たことがある。

 一方、別の企業では現場からのボトムアップで新たな業務形態による就労環境の改善施策を立案したが、メリットや必要性は理解するものの経営幹部の熱が入らず、手つかずのままだ。

 このように、経営サイドと現場サイドの覚悟と意思に温度差がある場合、ロボットが導入されたとしても、十分な成果は得られない。特に、現場サイドに強い意志を形成する上では、設計などの初期段階から巻き込むことが重要だ。

 現場が主体性を持って施策を検討し、ロボットへの要件を出していくことができれば、結果として、現場に根差したロボットの開発や、現場が始めやすい/利用しやすいロボットの運用設計/導入を推進できる。するとロボットが積極的に現場で活用され、愛着と信頼が生まれる。ロボットへの愛着と信頼が醸成されれば、現場から他現場へロボットが紹介されることで波及効果が期待できるため、経営目標実現に向けた推進力となる。

 加えて、ロボットを活用した効果創出意欲を現場で醸成することにもつながる。これにより、ロボット活用で見えた課題や課題解消に向けた施策を現場が主体的に検討し、経営目標に照らして経営サイドが評価、現場が施策を実行するといった現場改善サイクルを構築できる。

 このように、現場と経営幹部を巻き込んだチームを組成することはグランドデザインの実現、ロボット導入/施策実行の推進力につながる重要なポイントだ。

 これら3つのポイントを押さえることで、効果的な施策の導出、サービス/業務の設計を効率的に推進することができる。

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