踊り場を迎えるサービスロボット【後編】〜現場への導入を進める4つの施策とは〜:転換点を迎えるロボット市場を読み解く(3)(2/4 ページ)
転換点を迎えるロボット市場の現状と今後の見通し、ロボット活用拡大のカギについて取り上げる本連載。第3回は、現場へのサービスロボットの導入を進めるための4つの施策について解説する。
施策2:サービス&オペレーションデザイン
サービスロボットの活用により実現したいグランドデザインが明確になった後で重要になるのが、その実現に向けたサービス/業務の在り方を整理し、サービス/業務/環境の再設計を行うことだ。これは、ロボットに求める要望/要求を明確にし、グランドデザインに基づく変革の費用対効果を見積もる上でも重要だ。
しかし、前回の記事でも触れたがサービス業は標準化が難しいため、現在提供されているサービス/業務の実態を把握することは難しく、幾つかの拠点に対してヒアリングなどを行い、その分析結果に基づいてサービス/業務を再設計するケースが少なくない。
本来であれば、現状にとらわれない骨太なサービス/業務を再設計したり、複数の施策を導出/検証し効果的な施策を特定したりするには、PoC(概念実証)などの事前検証を行い見極める必要があるが、これには長い期間と多くのコストがかかる。そうした課題に対して最近見受けられる取り組みがサービス工学的アプローチである。
サービス工学的アプローチは「観測」「分析」「設計」「適用」の4つのステップがあり(図2)、ここでは「観測」「分析」「設計」について解説する。
まず観測のステップでは、顧客に提供するサービスや体験、それらを受けた顧客側の表情や行動、サービス提供に向けた従業員の動きや気遣いなど、サービス提供する環境を把握する。定性的な把握だけでなく、必要に応じて従業員の行動データや、サービス提供環境の図面といった定量的な把握も含まれる。これにより、今起きている課題が何か、グランドデザインに照らしたときに起こり得る課題が何かを抽出するための準備を整えることができる。
続いて分析だ。観測で得た定性的/定量的な情報から現状のサービス/業務/環境をモデリングし、グランドデザインに基づいて定義したターゲット顧客の行動によって生じる課題を、シミュレーションを行い検証する(図3)。
シミュレーションでは、ターゲット顧客の行動変化を、時間帯や季節による違いも含めてIFシナリオとして定義し、現在のサービス/業務/環境によって引き起こされる課題とその原因を定量的な結果から特定することで、グランドデザイン実現に向けて解決すべき課題を明確化できる。
次は設計だ。分析で得た解決すべき課題に対して、可能性のある施策を導出する。その施策をモデル化し、シミュレーションを通じて効果的な施策を導出する。
可能性のある施策を導出する際、どんなサービス/業務や環境の改善が可能か、どんな技術/製品があるかを捉えながら多くの施策を検討することが重要だが、従来であれば試験利用を通じて効果を見定めるため、多くの時間とコストをかける必要がある。また、そもそも試験利用する対象施策は経験と勘に頼った選定になることもあり、真に効果のある施策ではないことも現場では見受けられる。
ここでも、シミュレーションを活用することで、さまざまな施策の検討に多くの時間とコストをかけることなく、施策の有用性を評価することができる。
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