SOLIDWORKSのこれまでとこれから――プラットフォームやAIが何をもたらすのか:3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2024(3/3 ページ)
ダッソー・システムズは年次イベント「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2024」を開催した。本稿では「3DEXPERIENCE Works」ポートフォリオの提供価値、そして進化を続ける「SOLIDWORKS」の方向性が示されたキーノートの模様を紹介する。
SOLIDWORKSは、コラボレーションを実現する3DEXPERIENCEプラットフォームを活用するアプローチとして、“WITH the Platform”と“ON the Platform”の2つの形態を用意している。前者はデスクトップ版のSOLIDWORKSとCloud Servicesとの組み合わせ、あるいはクラウド接続版SOLIDWORKS(3DEXPERIENCE SOLIDWORKS)のことだ。後者はフルクラウド版(Webブラウザベース)の設計環境「SOLIDWORKS CLOUD」のことを意味する。
また、3DEXPERIENCEプラットフォームの利用に不慣れなユーザーが、プラットフォームについて学習できるクイックツアー機能も提供しており、段階的にプラットフォームのメリットを習得しながら業務に生かすことができるという。「3DEXPERIENCEプラットフォームを活用すれば、古いデータを恐れることなく、常に最新の状態で共同作業が行える。更新があっても1クリックで反映できる。いつでもリアルタイムのコラボレーションが可能となる」とクマー氏は述べる。
クマー氏は、使用するデバイスに依存しないフルクラウド版の設計環境についても言及。新たに、2D図面の作成や編集が可能な「DraftSight Creator」をリリースしたことなどを紹介した。「われわれはこうした機能強化に向けた投資を行い、それによってユーザーの可能性を広げていく」(クマー氏)。
パートナーシップによる機能強化やAI機能の方向性
クマー氏はパートナーシップの拡大による強化の方向性についても触れた。Cadence Design Systems(以下、ケイデンス)との協業により、ケイデンスのPCB設計ソフトウェア「OrCAD X」およびデザインプラットフォーム「Allegro X」を統合したエレメカ協調設計におけるコラボレーションエクスペリエンスを提供するという。また、エレメカ協調設計の話題に関連し、フルクラウドの設計機能「3D Mechatronics Creator」についても紹介した。
AIを活用した機能については、既に「Design Assistant」を提供しており、その中で「Mate Helper(合致作成のデザイン支援)」「Sketch Helper(スケッチのデザイン支援)」などSOLIDWORKSユーザーに提供していることをアピールするとともに、AIによるコマンド予測機能の開発も進められていることを紹介した。
さらに、画像からスケッチを生成するAI機能の開発も行っているという。例えば、駆動部のある装置のポンチ絵を紙に描き、それをカメラで撮影して画像を取り込むと、形状(スケッチ要素)はもちろんのこと、固定点やスライド、ジョイントなどの機構的な要素も認識し、動きのあるスケッチを生成してくれる。
その他、3Dモデルから2D図面を生成する機能や、2024年7月にパートナーシップを発表したMistral AIとの取り組みにも言及し、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)によって質問に回答してくれる「SOLIDWORKS Forum Chat(Bot)」などを紹介した。「AIの活用によって生産性が向上し、設計者はイノベーションの創出により多くの時間を割けるようになる。ここで紹介したものはわれわれが開発を進めているAI機能のごく一部となるが、常に業界と技術トレンドに注目し、生産性の向上に寄与する機能開発に取り組んでいる」(クマー氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 最新版「SOLIDWORKS 2025」とともに、パワーユーザー向け新パッケージも発表
ダッソー・システムズは、3D設計/エンジニアリングソリューション「SOLIDWORKS」の最新バージョン「SOLIDWORKS 2025」に関する記者説明会を開催。SOLIDWORKS 2025に搭載される主な新機能の紹介の他、新たなパッケージ「SOLIDWORKS Ultimate」について発表した。 - ダッソー・システムズの新CEOダロズ氏が事業戦略や今後の方向性について言及
ダッソー・システムズは年次イベント「3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2024」に併せてプレスブリーフィングを開催。ベルナール・シャーレス氏に代わって、2024年1月からCEOに就任したパスカル・ダロズ氏が同社のビジョンや方向性などについて語った。 - AI×設計・解析の未来を示す「Magic SOLIDWORKS」についてシャーレス氏が言及
SOLIDWORKSと3DEXPERIENCE Worksの年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE World 2024」が米国テキサス州ダラスで開幕した。本稿ではダッソー・システムズ、SOLIDWORKSおよび3DEXPERIENCE Worksのキーマンの発表内容を中心に、1日目のゼネラルセッションの模様をダイジェストでお届けする。 - 製品開発だけでなくビジネスの成功も支援するダッソー・システムズのAI戦略
SOLIDWORKSと3DEXPERIENCE Worksの年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE World 2024」が米国テキサス州ダラスで開幕した。本稿では、ダッソー・システムズのAI戦略について詳しい説明があった2日目のゼネラルセッションの模様をお届けする。 - イノベーション創出に必要な3つの変革を後押しする「3DEXPERIENCE Works」
ソリッドワークス・ジャパン主催「3DEXPERIENCE World Japan 2023」(会期:2023年12月1日)の基調講演で示された3D設計開発ソリューション「SOLIDWORKS」の今後の方向性、イノベーションプラットフォームとしての役割を果たす「3DEXPERIENCE Works」について、同日行われたプレスラウンドテーブルの情報を交えながら紹介する。 - Webブラウザで動作する3D CADに注目してみた
連載「テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線」では、筆者が日々ウォッチしているニュースや見聞きした話題、企業リリース、実体験などを基に、コラム形式でデジタルモノづくりの魅力や可能性を発信していきます。連載第2回のテーマは「Webブラウザで動作する3D CAD」です。