GAIA-Xが目指す自律分散型データ共有、“灯台”プロジェクトは協調から競争領域へ:加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(4)(3/5 ページ)
欧州を中心にデータ共有圏の動向や日本へのインパクトについて解説する本連載。第4回は、第3回で取り上げたIDSAと並んで業界共通での仕組み作りを担うGAIA-Xを紹介する。
GAIA-Xのライトハウスプロジェクトの紹介
ここからはGAIA-Xの代表的な取り組みとしてライトハウスプロジェクトの詳細を紹介したい。(1)〜(18)に挙げる多様なプロジェクトが進められている。
(1)【製造】EuProGigant
欧州製造業間でのデータ共有を通じたユースケースを開発する。ドイツとオーストリアから計16社が参加し実証を実施。ERPやMESのデータなど、企業の踏み込んだデータを活用/連携させた取り組みを行っている。以下に主なユースケースを挙げる。
- 製造領域でのCO2フットプリントモニタリング
- 共有デジタルツイン(Shared Digital Shadow:SDS)を通じた企業間検証プラットフォーム
- 欧州の共通データインフラを活用し、ドライブシャフト、ベアリング、ハウジングなどの製造データを共有することにより、要件にあった部品や製造企業のマッチングを行うプラットフォーム
- 柔軟な組み立てラインのための5G技術×無人搬送システムの開発/検証など
(2)【製造】ACCURATE
MaaS(Manufacturing as a service)のコンセプトで、製造業をサービス業に変えるデータ連携プロジェクトを推進。企業横断でのデジタルツインを構築し、シミュレーションを通じたパフォーマンス予測、最適化、生産プロセスの制御の実現を目指す。コンチネンタル、エアバス、フラウンフォーファー研究所などが参画。マーケットプレースにおいてデータセットや、アルゴリズム、各種SaaSが提供されている。
(3)【製造】DATA4-IndustryX
自動車やエネルギーをはじめとする各業界でのデータ共有を通じたCO2削減などを図る。シュナイダーエレクトリック、Valeoなどが参画。フランス政府のイニシアチブであるFrance2030プログラムなどから支援を受ける。Manufacturing-Xにおけるキープロジェクトでもある。
(4)【製造/電機電子】SCSN/Smart Connected Supplier Network
オランダの国立研究機関のTNOが主導し、現在300社が所属。3000社規模へ拡大を図る。サプライチェーン間で経営データ/工場データ(オーダー、予測、図面、物流情報、センシングデータなど)を共有することによる効率性向上、連携の実現を目指す。
(5)【航空宇宙】COOPERANTS
航空宇宙領域でのデータ連携を図るプロジェクト。以下のようなユースケースがある。
- 【アジャイル製造】 サイバーフィジカルシステムを活用したリアルタイムの製造プロセスとデジタルプロセスをリンクする高度なスマートサービス
- 【顧客・企業間 コラボレーション】 顧客・資金提供者と、元受け企業におけるドキュメント・データの共有を通じた迅速な連携
- 【デジタルプロジェクトマネジメントオフィス】 データ連携を通じて航空宇宙領域におけるプロジェクトベースでの連携を促進。プログラムプランニング、リスク管理、プロジェクトレビューなど様々なスマートサービスで構成される
- 【機能的デジタルツイン(Function Digital Twin)】 飛行ソフトウェア等を通じた宇宙船や衛星等の包括的なシミュレーションを実現
- 【ホロワーク】 ARを活用した3D作業指示を通じた組立・システム/設備インテグレーション・テスト等のプロセスを簡素化し、品質を向上させる
- 【ロボットデジタルツイン】 火星月面探査車などのロボットにおけるシステムのライフサイクル全体のデジタルツインを構築し、企業を超えた連携を実現する
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