検索
特集

「Autodesk Fusion」が目指すものメカ設計インタビュー(1/2 ページ)

3D CAD/CAM/CAE/PCBのクラウド型統合ソリューションとしてではなく、“製造向けインダストリークラウド”として目にする機会が増えた「Autodesk Fusion」の立ち位置や優位性などについて、あらためて米Autodeskの担当者に話を聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 ツールベンダーからプラットフォームカンパニーへとシフトするオートデスク。2024年10月に米国で開催された年次カンファレンス「Autodesk University 2024」(以下、AU 2024)では、クラウド基盤「Autodesk プラットフォーム」やAI(人工知能)関連機能「Autodesk AI」に関する最新情報を紹介していた。

 Autodesk プラットフォームの上に構成されるインダストリークラウドの1つが製造業向けの「Autodesk Fusion」(以下、Fusion)となるが、以前まではどちらかというと、“3D CAD/CAM/CAE/PCBのクラウド型統合ソリューション”という位置付けが強かったように思う。だが、最近では“製造向けインダストリークラウド”として目にする機会が増え、AU 2024でもAIを活用した最新の機能強化について発表があったばかりだ。ちなみに、以前までは「Fusion 360」と呼ばれていたが、2024年1月末にFusionへと名称変更されている。

 今回、整理の意味も込めて、「JIMTOF2024(第32回日本国際工作機械見本市)」(会期:2024年11月5〜10日/会場:東京ビッグサイト)にあわせて来日した、米Autodesk 戦略パートナーシップ担当バイスプレジデントのKen Foo(ケン・フー)氏と、同社 設計・製造担当 マーケティング シニアディレクターのAishwarya Balamukundan(アイシュワリヤ・バラムクンダン)氏の2人に、あらためてFusionの立ち位置や優位性、日本市場での期待について話を聞いた。

人とデータとプロセスをつなげる 「Fusion」の変わらぬコンセプト

――近年、Autodeskはツールベンダーの立ち位置から“プラットフォームカンパニー”へとシフトしようとしています。そうした中、あらためて製造業向けインダストリークラウドとして展開しているFusionの位置付けについて教えてください。

バラムクンダン氏 まず、製造業で何が起きているのかを確認しておきたい。製造業は過去40年間、さまざまな技術的な進化に直面しながら成長を遂げてきた。しかし、その一方で使われるシステムやツールごとにデータが細分化され、別々に保存され、全体としてデータ連携ができていない状況、いわゆるサイロ化が常態化してしまった。この結果、設計や製造、サプライチェーンなどの一連のワークフローにおいてデータの分断が生じている。

米Autodesk 設計・製造担当 マーケティング シニアディレクターのアイシュワリヤ・バラムクンダン氏
米Autodesk 設計・製造担当 マーケティング シニアディレクターのアイシュワリヤ・バラムクンダン氏

 このような状況の中、オートデスクは約10年前に、人とデータとプロセスをつなげることをコンセプトに掲げ、Fusionの提供を開始した。その最初の取り組みとして、3D CAD、CAM、CAE、PCB、データ管理といったように、カバー領域を拡大し、それらを統合していきながらFusionを進化させてきた。そして、Fusionがいかに進化しようとも、今も当初のコンセプトから変わらず、人とデータとプロセスをつなげてサイロ化をなくすことを目指している。それこそがプラットフォームの意義だと考えている。

 こうした考えに基づき、Fusionは“あるもの全てをつなげる”ことを目指している。それがFusionの中核にあるビジョンでもある。FusionはAutodesk プラットフォームを基盤としており、API(Application Programming Interface)を介して、オートデスク製品以外のサードパーティー製ツールや、他ベンダーの製品とも連携できるような仕組みを提供している。ツールだけでなく、ベンダーの壁も越えたオープンなエコシステムの実現を目指しており、既に100社以上のパートナー企業がわれわれのエコシステムに参画している。1つのプラットフォーム上で、製品開発に関わる全てのワークフローを一気通貫で行えるようになれば、設計者のアイデアを実際のプロダクトに落とし込み、それを消費者に届けるというサイクルを、より容易に、より迅速に回せるようになる。

FusionはAutodesk プラットフォームを基盤としており、オートデスク製品との連携はもちろんのこと、APIを介すことでサードパーティー製ツールや他ベンダーの製品とも連携できるオープンなエコシステムとなっている
FusionはAutodesk プラットフォームを基盤としており、オートデスク製品との連携はもちろんのこと、APIを介すことでサードパーティー製ツールや他ベンダーの製品とも連携できるオープンなエコシステムとなっている[クリックで拡大] 出所:オートデスク

――Fusionは製造業にどのようなインパクトをもたらすとお考えですか?

バラムクンダン氏 まず言えることは、業界の中で最も大きな資産はデータであるということだ。昨今のAI活用の流れを見ても、いかにデータが重要であるかがよく分かると思う。先ほども述べた通り、Fusionは1つのプラットフォーム上で人、データ、プロセスをつなげ、製品開発に関する意思決定の迅速化に寄与し、より良い製品開発に貢献する。これこそがFusionが製造業にもたらす一番のインパクトだ。例えば、Fusionであれば設計と解析のやりとりがシームレスに行えるため、設計段階で品質や性能を向上させたり、早期にボトルネックを特定したりといったことに役立つ。その結果、生産性が向上し、製品の品質やパフォーマンスの改善にもつながり、費用対効果もしっかりと出せるようになっていく。

フー氏 世界的に見ても、特に製造業は深刻なリソース不足に陥っており、市場からの要求もより一層厳しさを増し、競争も激化している。製造業の多くの企業が、このような困難に立ち向かわなければならない状況にある。オートデスクはFusionをはじめとするテクノロジーの力によって、そうした状況を打破し、顧客のビジネスを成功に導いていきたいと考えている。

 例えば、市場からの要求の観点で言えば、サステナビリティへの対応が挙げられるが、製品設計段階でサステナビリティ関連の知見を提示してくれる「Autodesk Inventor」向けのアドオン「Makersite」などを既に用意している。

Autodesk Inventor向けのアドオン「Makersite」のイメージ。選択した材料がサステナビリティにもたらす影響をヒートマップで表示し、代替材料を検討できる
Autodesk Inventor向けのアドオン「Makersite」のイメージ。選択した材料がサステナビリティにもたらす影響をヒートマップで表示し、代替材料を検討できる[クリックで拡大] 出所:オートデスク

 また、オートデスク自身もサステナビリティに関する取り組みを強化しており、非常にアグレッシブな投資を行っている。われわれは、この業界の中で“Chief Sustainability Officer(CSO)”を任命している数少ない企業の1つだと自負している。このような姿勢をわれわれ自身が示すことが重要だと考えている。サステナビリティの取り組みに関して、今後も継続的な投資を行っていく計画だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る