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日立製作所の成長は「これからが本番」、産業系セクター率いる阿部氏が描く青写真日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌(1)(2/3 ページ)

日立製作所では2022年4月に多様な産業系事業を傘下に収めたCIセクターを設立した。本連載では多彩な事業を抱える日立製作所 CIセクターの強みについて、それぞれの事業体の特徴と、生み出す新たな価値を中心に紹介していく。第1回となる今回は新たにCIセクター長に就任した阿部氏のインタビューをお届けする。

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アセットの持ち方を工夫したボッシュへの空調事業の売却

MONOist 業績が好調の中、さらなる成長の道筋についてどのように考えていますか。

阿部氏 成長を続けていくためには投資をどこに行うかというのが重要になるが、CIセクターは全体の事業範囲が広いため、その優先順位や投資のやり方は工夫が必要だ。

photophoto コネクティブインダストリーズセクターの事業内容[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 例えば、象徴的なのが、2024年7月に発表したボッシュ(Robert Bosch)への空調事業の売却がある。これは、日立GLSとジョンソン・コントロールズ・インターナショナルが共同出資で設立した空調事業の合弁会社のジョンソンコントロールズ日立空調(JCH)をボッシュに譲渡する契約を締結したものだが、さまざまな話し合いの中で最適な姿を模索する中で生まれたものだ。

 ボッシュにJCHは売却する一方で、業務用空調機器の開発/製造拠点である清水事業所(静岡市清水区)は日立GLSが取得し、グループ内に残した。自分たちで全てのアセットを持つのではなく、グローバルフットプリントが必要な点はボッシュと協力しながら伸ばしていく。一方で、マザー工場となる清水工場を日立GLSに残すことで、業務用空調事業における国内向けの開発、製造、販売、保守を一体化して運営することができ、冷熱ソリューションなどでその強みを発揮できるようにする。また、ヒートポンプ技術などは環境関連でカギを握る技術の1つでもあり、それらをグループ内に残すという意味もある。

 製品が強くないと事業は成長しない。そのためには開発投資が必要だが、投資余力を獲得するためには事業規模が必要になる。技術を育てるためのマザー工場は残す一方で、事業規模をどう作るかという点で、アセットをどう持つかということを検討し、ボッシュともしっかり話し合って、信頼を築いた上で話を進めた。2025年度第1四半期に成立予定だがしっかり交渉をまとめていく【訂正あり】。

【訂正】初出時に譲渡成立時期を2024年度末としていましたが、2025年度第1四半期の誤りでした。お詫びして訂正いたします(2024年10月31日14:30)

注力領域は主要技術を抱えクロスBUで成長へ

MONOist 事業の中でもより細かい粒度で強弱や必要性を見極めて、状況によってはさらにM&Aや事業売却を進めていくということでしょうか。

阿部氏 基本的な考えとして、まずグローバルでトップ3になる事業や、ニッチだけどトップにある事業はしっかり伸ばしていく考えだ。例えば、日立ハイテクが扱う半導体製造装置の測長SEMなどはニッチだが高いシェアを持っており、そういう領域の製品はさらに成長を進めていく。そうではない事業については、アセットの持ち方を工夫していくことでさらに成長できる場合も多いため、そのやり方を模索する。今回のボッシュの件もそうだが、日立GLSとトルコのアルチェリクで設立した海外における白物家電事業の合弁会社もそういう考えで進めたものだ。

 CIセクターの幅広い事業体の中で全ての事業を自分たちだけで行って市場を獲得するのは現実的ではなくなっている。技術面での価値は押さえつつ、日立ブランドをうまく活用しながら、パートナーと協業して事業を伸ばしていくことを考えている。そのために幅広い視野で事業の持つ価値や市場性、パートナーなどを見極めていく。

MONOist 半導体製造、バッテリー製造、バイオ医薬製造など、注力領域として挙げている領域がありますが、関連する技術は残していくことを考えるということでしょうか。

阿部氏 事業を成長させることを考えると、市場そのものが成長しているところにアクセスすることが必要になる。伸びる市場という意味で注力領域を挙げているが、そこに貢献するキーテクノロジーについてはできる限り自社で抱える考えだ。

 これらは投資領域だとみており、技術開発投資を積極的に行う。例えば、バッテリー製造領域については、EV(電気自動車)向けが鈍化したように見えるが、自動車だけでなくさまざまなものが電動化、自動化が進んでいる中でまだまだ成長は続く。例えば、鉄道や建設機械、農機具なども電動化が進んでおりバッテリーが重要になってきている。バッテリーを量産していく中で、日立パワーソリューションズの持つロールプレス設備や、日立ハイテクの持つさまざまな検査機器が重要な役割を果たす。そこで製造だけでなくトータルバリューチェーンを見て、デジタル技術を組み合わせ、事業を生み出していく。そのための投資を進めていく。

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バッテリー製造領域でのビジネスモデル[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 バイオ医薬製造やヘルスケア領域については、培養槽や医薬品/医療機器製造業向け製造/品質管理システム「HITPHAMS」などで非常に高いシェアを持っており、これらを強みとしつつ、組み合わせることでさらに価値提案を広げていく。さらに医薬系では、米国グループ会社であるFlexware Innovationが製薬エンジニアリングサービス企業Castle Hillを買収するなど、とがった企業の買収を行い、ケイパビリティの拡充を図っている。

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バイオ医薬製造領域でのビジネスモデル[クリックで拡大] 出所:日立製作所

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