Polyuseが量産コンクリート3Dプリンタを初公開 施工現場での設置はわずか5分:第4回 建設DX展[大阪](2/2 ページ)
Polyuseは「第4回 建設DX展[大阪]」で、2025年4月に量産開始予定のコンクリート3Dプリンタ「Polyuse One」を披露した。展示会などで同機を公開するのは「初」となり、動作する様子(実際の出力は行っていない)も見ることができた。
プリンタ、材料、積層アルゴリズムを統合して開発
Polyuseの3Dプリンタは「材料、材料を練り混ぜるための機械、出力制御の全てを統合して開発していることが特長だ」(大岡氏)という。それぞれを連動させて制御することで、目的とする性能の担保を可能にしている。また、同社のプリンタは、施工現場のニーズや、土木構造物に求められる各種法令やガイドラインにも準拠できることを前提として開発されているという。
出力する材料は、モルタル(セメント、水、直径5mm以下の細骨材を練り混ぜたもの)で、砂や石などの硬い材料が含まれ、化学繊維や各種の混和剤も加えられる。材料は、圧送するため適度な流動性が求められると同時に、形を保って次の層を積むことができる程度に速やかに硬化することが求められる。3Dプリンタで出力する材料は、通常のコンクリートと比べてかなり水分量が少ないという。通常のコンクリートは型枠に流し込んだ後に水をまいたり、シートを被せたりする養生の手間と時間がかかるが、3Dプリンタによる印刷物は1〜2時間そのままにした後、シートを被せる程度でよく、養生期間も基本的に短くなる。
出力する1層の厚みは平均1cm、幅は3cmが基本となる。厚みは調整することもでき、幅もノズルなどの機械側の変更なしに制御側で4cmなどに設定することが可能だ。
材料は水を加えて使用するプレミックス状態で提供する。プリントする構造物によって求められる性能が異なるため、配合を変えた材料を現在は3種類用意している。原材料は全て国内で調達している。なお、通常のコンクリートよりも原材料の品質コントロールはシビアになってくるという。
設計要件を満たす経路を自動で作成
同社は、機械学習を活用した印刷経路の最適化研究にも取り組んでおり、経路作成ソフトウェアについても納品後、順次機能を開放する予定だとしている。プリンタを設置する予定の環境において、構造物の設計強度を確保でき、外部から水分や塩化物などの劣化因子が侵入しないといった条件を満たせるような、吐出量や最適経路などの自動作成を、これまでの施工で蓄積したデータベースを活用しながら進めているという。
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