3Dプリンタ住宅はなぜこんなに安いのか? 住宅づくり自動化の第一歩を見学:3Dプリンタの可能性を探る(1/3 ページ)
セレンディクスが2024年4月に岡山県で小規模3Dプリンタ住宅「serendix10」を施工した。現地での施工の様子を関係者や施主の声を交えながら紹介する。
3Dプリンタ住宅メーカーのセレンディクスは、2024年4月に岡山県において小規模3Dプリンタ住宅「serendix10」(当初は「Sphere」としていたが、現在は本呼称に統一)を施工した(図1)。serendix10は24時間での施工が可能であり、人件費や物流費などのカットにより大幅な価格の低減を実現するとしている。さらに、同社は住宅の製造から施工、仕上げまで、全ての工程をいずれはロボット化するという目標を掲げている。岡山県でのserendix10の施工の様子を、セレンディクス 執行役員 COO(最高執行責任者)の飯田國大氏および施主、施工会社の声を交えながら紹介する。
岡山県の山奥に近未来の建物が登場!
今回施工されたserendix10は、セレンディクスが2022年10月に「国内初の3Dプリンタ住宅」として一般販売したもので、serendix10の3棟目の施工事例となる。建設されたのは岡山県の山あいで、キャンプ場などがあるアウトドアに人気の地域だ。現場まではクルマ1台がやっと通れるほどの道もあり、かなりの山奥になる。
今回の施主はデザイン会社を経営する吉本実代氏で、初の個人での購入者だ。3Dプリンタでパーツを出力したのは、百年住宅(愛知県/小牧工場)、セレンディクス(熊本県水俣市)、ナベジュウ(群馬県)の3社で、現地での施工は2棟目(長野県佐久市)も担当したナベジュウが行った。
serendix10の大きさは、床面積が約10m2、外形が直径約3.3m、高さ約4m。壁の厚さは30cmで二重になっており、間にフレーク状の断熱材が詰められている。断熱性能は世界で最も厳しい欧州の基準をクリアしているという。
意匠設計はNASA(米国航空宇宙局)の火星移住プロジェクトも手掛ける曽野正之氏とオスタップ・ルダケヴィッチ氏が担当。3Dプリンタの自由度を生かした形状が特徴で、球形のため耐震ならびに強風にも強い。構造設計は著名な構造設計事務所のKAPが担当している。
3DプリンタはオランダのTwente Additive Manufacturing(TAM)製で、このプリンタはメーカー指定材料を使う必要がない。そのため、国内で独自に開発したモルタル材料を使用している。
1日目、パーツの組み上げからスタート
施工の初日はめったにないほどの土砂降りだったが、予定通りにプリントしたパーツの組み上げからスタートした。3Dプリンタ製のserendix10本体は6つのパーツに分かれている(他に屋根、玄関部分などもある)。建物の基礎となるコンクリート製のベタ基礎は、百年住宅によって作られており、まず基礎と一番下のパーツが緊結された。当日はトラックおよびクレーン車が乗り入れており、クレーン車がパーツを持ち上げて慎重に位置を確認しながら積み上げていた(図2)。施工は午前8時に開始し、午前中のうちに難なく6つのパーツを組み上げることができた(図3)。
また、組み上げの合間には、窓部分のサポート材を取り除いたり(図4)、玄関パーツを設置したりしていた。午後の作業は引き続き雨が激しかったため中止となった。
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