普及するSiCパワー半導体固有の劣化検査サービス開始、正しい省エネ性能を確保へ:組み込み開発ニュース
OKIエンジニアリングは、SiCパワー半導体固有の劣化モードに対する評価サービスを開始する。JEITAやJEDECにおける規格に準拠した「AC-BTI試験サービス」を実施する。
OKIエンジニアリングは、SiCパワー半導体固有の劣化モードに対する評価サービスを2024年9月26日に開始する。JEITA(電子情報技術産業協会)やJEDEC(米国電子工業会)における規格に準拠した「AC-BTI(Alternating Current - Bias Temperature Instability)試験サービス」を実施する。
SiCパワー半導体は、従来のSiパワー半導体に比べて高効率や低損失、高温への耐性がある点などから、高効率な電力変換デバイスとして期待されている。しかし一方で、Siパワー半導体にはない「スイッチング動作による閾値電圧の変動(AC-BTI劣化モード)」という短所が存在する。パワー半導体はON/OFFをスイッチングさせて使用することが多いが、SiCパワー半導体ではACストレスにより閾値電圧が変動し、設計した製品の消費電力増加につながったり、回路設計時の動作マージンを圧迫するようなことが起こり得る。
その影響を抑えるためには、SiCパワー半導体のAC-BTI試験を実施し、その特性や動作推奨範囲などをあらかじめ把握しておく必要がある。そこで、OKIエンジニアリングでは、試験装置メーカーと協力してカスタムメイドの検査装置を開発し、AC-BTI試験の受託サービスを開始する。AC-BTI試験はJEITAのEDR-4713 附属書E(2023年8月)や、JEDECのJEP195(2023年2月)など、規格化されてからまだ日が浅く、試験についてのノウハウが確立されていないところも商機として捉えているという。
試験装置は48検体同時試験が可能な他、温度条件やストレス印加条件などを調整可能だ。また、デバイスを取り外さずにオンボードで連続試験なども可能としており、効率的に試験が進められる。
AC-BTI試験サービスは、自社デバイスの特性を把握することを目的とした半導体メーカーの他、デバイス選定などに活用を想定するユーザー企業などもターゲットと置いている。OKIエンジニアリング 代表取締役社長執行役員の中井敏久氏は「SiCパワー半導体はこれから爆発的に伸びていく。AC-BTI試験は規格化されてまだ間もないが、その中で正しく性能が評価されるような環境を作り出すことが重要だ。2026年度までに売上高1億円を目指す」と述べている。
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