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覚悟決めて売る! 老舗石けんメーカーがこだわる“クリーン”なモノづくり新製品開発に挑むモノづくり企業たち(6)(2/2 ページ)

本連載では応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」で注目を集めるプロジェクトを取り上げて、新製品の企画から開発、販売に必要なエッセンスをお伝えする。第6回は木村石鹸が開発した、こだわりの石けん製品を取り上げる。

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自社ブランドが伸びたらOEM事業も成長

――ヘアケアブランド「12/JU-NI(ジューニ)」はMakuakeのプロジェクトで大きな反響を呼びました。その後の変化はありましたか。

木村氏 12/JU-NIは当社の開発者自らがした、髪悩みの解決に特化したヘアケアブランドです。Makuakeのプロジェクトに挑戦した時点では予約販売のみの予定でしたが、これをきっかけに一般発売が決まりました。現在では自社ブランドの中で一番大きな売り上げを誇るブランドになり、OEMと自社ブランドの売上比率がそれぞれ約40%ずつになるまで成長しました。

ヘアケアブランド「12/JU-NI(ジューニ)」
ヘアケアブランド「12/JU-NI(ジューニ)」[クリックして拡大] 出所:木村石鹸

 しかも利益率は自社ブランドの方が圧倒的に高い。利益ベースで見ると、会社のメイン事業がOEMから自社ブランドへと移行するきっかけになりました。僕たちにとっては自社ブランド事業が一段階、飛躍するきっかけをいただいたと思っています。

――若い方の入社も増えたとお聞きしています。

木村氏 そうですね。自社ブランドを始めてから、若い人が来てくれるようになりました。やっぱり自分たちの商品が目に見えるのが大きいと感じます。裏方だとどうしても、何をやっているかよく分からない、ただの町工場にしか見えないのが、自分たちで企画をして、しかも自分の生活で使えるようなものを作っているということで、イメージが湧きやすくなったのではないでしょうか。現在まで7年間連続で新卒採用を続けています。

「石けん屋」のこだわりを詰め込んだチャレンジ

――最新のMakuakeプロジェクトでは「木村石鹸の木村石鹸」を発表されました。経緯や特徴を教えてください。

木村氏 当社は木村石鹸という社名ですが、これまでの商品ラインアップに固形石けんはありませんでした。私たちにとって石けんは、粉末のものや液体のものという感覚でしたが、一般の方にとって石けんといえば、四角や丸の固形石けんですよね。そのギャップもあって、石けん屋として名乗る以上は、どこかのタイミングで本格的な固形石けんを作るべきではないか、と思うようになったんです。そして、ちょうど創業100周年ということでそれを形にしました。

石けん屋としてのこだわりを詰め込んだ
石けん屋としてのこだわりを詰め込んだ[クリックして拡大] 出所:木村石鹸

 この石けんには石けん屋だからこそのこだわりが詰まっています。一般的に石けんは、動植物の油脂とアルカリを反応させて作られる洗浄成分とされています。今回の固形石けんでも、石けん屋のこだわりとして、色々な成分を組み合わせるのではなく、油脂の組み合わせによって、特徴ある製品を作ることにチャレンジしました。

 目指したのは石けん特有のつっぱり感を出さずに、洗い上がりがしっとりする、保湿性の高い製品です。どの油がいいか試行錯誤を重ねた結果、オリーブオイルとシアバターの2つの油をハイブリッドに組み合わせたものを採用することにしました。さらに、泡立ちをよくするためヤシ油を添加しています。それらの比率もトライアンドエラーを重ねて導き出しました。石けんそのものにこだわったがゆえに非常に手間のかかる作業になりました。でもそれは、私たちが「石けん」でどれだけこだわりを貫けるか挑戦した結果です。

 また通常、私たちは大きな釜の中で油脂を加熱、撹拌(かくはん)する「釜焚き製法」を採用しているのですが、この石けんでは「枠練りコールド製法」を使っています。熱を加えずに、油脂とアルカリの反応熱でじわじわと硬化させて、石けんを作ります。この方法には油の特徴を残せるというメリットがあり、オリーブオイルとシアバターの特徴を余すところなく引き出し、石けんとは思えない洗い上がりを実現しています。

――今後の展望をお聞かせください。

木村氏 今後は自社ブランド自体をどんどん伸ばしていくよりは、パートナーとして一緒にやって意味がある、コラボレーションに近いようなOEM事業の取り組みを増やしていきたいと考えています。ある特定の業界に特化したような、自社では知見のない領域のこともOEMで一緒にやることで、広がりが生まれると思っています。

 当社は「くらし、気持ち、ピカピカ」というスローガンを掲げています。これには、僕たちの製品を使うことできれいになる、美しくなるというだけではなく、僕たちの製品を使っていること自体が「気持ちいい」ことであってほしいという思いを込めています。そのためには、会社自体がクリーンでなければいけません。「くらし、気持ち、ピカピカ」な社員が働いている良い会社で生まれた製品で、ユーザーの皆さまも気持ちよさを感じてもらえる、そんな存在を目指していきたいです。

⇒連載「新製品開発に挑むモノづくり企業たち」のバックナンバーはこちら
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筆者紹介

長島清香(ながしま さやか)

編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。


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