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業況はコロナ禍以前の水準に回復 今後は無形固定資産への投資が重要にものづくり白書を読み解く(2)(4/6 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「2024年版ものづくり白書」が2024年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2024年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。

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GXはスコープ3の取り組みが停滞

 2023年版ものづくり白書では、GX(グリーントランスフォーメーション)による全体最適化の達成が、製造事業者の先進性の評価軸となる国際的な潮流が生まれており、日本企業もこうした動きに対応する必要があると指摘されていた。

 日本の製造事業者の脱炭素、省資源に向けた取り組み内容について見てみると、大企業、中小企業ともに脱炭素関係の取り組みでは「温室効果ガス排出量の削減」「再生可能エネルギーの導入」「温室効果ガス排出量の見える化」が多く、省資源関係では「3Rの推進」が多い。一方、中小企業は大企業と比べて「特にない」も4割弱と多い(図14)。

図14:脱炭素/省資源に向けた国内製造事業者の取り組み内容
図14:脱炭素/省資源に向けた国内製造事業者の取組内容[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 温室効果ガス排出量の削減と見える化のいずれか、または両方に取り組んでいる事業者では、個社内の省エネ徹底、再エネ導入など進めやすいスコープ1、2に取り組んでいる割合が多い。一方、スコープ3はサプライチェーンを横断した取り組みが求められるため、技術的な課題が多く、スコープ1、2ほど進んでいない状況だ(図15)。

図15:温室効果ガスに対する我が国製造事業者の取組内容
図15:温室効果ガスに対する我が国製造事業者の取組内容[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 経済産業省では脱炭素と経済成長/産業競争力強化、エネルギー安定供給をともに実現するGXに向けて、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)」および「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(2023年7月閣議決定)に基づき、「成長志向型カーボンプライシング構想」を掲げている。同構想によって、今後10年間で150兆円超が必要とされるGX投資を官民協調で実現していくためのGX経済移行債が新たに創設される。経済産業省は、このGX経済移行債を活用した「分野別投資戦略」をまとめ、技術開発と実装を推進していくとしている(図16)。

図16:投資促進策の組み合わせイメージ
図16:投資促進策の組み合わせイメージ[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

国家レベルで経済安全保障の確保に向けた取り組みを強化中

 昨今、諸外国が「経済安全保障」の名の下に、地政学的な変化、破壊的な技術革新に対応する各種施策を展開している。日本の経済産業省も取り組みを強化している。2022年5月には「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和4年法律第43号)」が交付され、特定重要物資に先端電子部品が新たに指定された(図17)。

図17:特定重要物資の一覧
図17:特定重要物資の一覧[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 経済産業省は、経済安全保障に関する有識者会議を2023年10月より複数回にわたって開催している。同年10月31日に公表した「経済安全保障に関する産業・技術基盤強化アクションプラン」には、産業支援策(Promotion)、産業防衛策(Protection)を機動的に連携させながら、同志国や地域とともに(Partnership)国益を守ることを基本的考えとして位置付けている。あわせて、国内各省の連携や産業界との対話の実施も盛り込んだ(図18)。

図18:経済安全保障に関する産業・技術基盤の強化(基本的考え方)
図18:経済安全保障に関する産業・技術基盤の強化(基本的考え方)[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

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