全てはモーターの量産から始まった、三菱電機名古屋製作所設立100周年:工場ニュース(2/2 ページ)
三菱電機のFA機器の主力生産拠点である名古屋製作所が設立100周年を迎えた。これまでの歩みと今後に向けた取り組みを中心に紹介する。
次の100年に向けてデジタルとの融合も
1974年に名古屋製作所の分工場として開設された新城工場(愛知県新城市)では、現在は三相モーターを量産している。その他にも、国内は9社、海外は中国やタイ、インドにある5つの関係会社と連携して事業運営に当たっている。2023年からはインドの生産拠点が稼働し、シーケンサーなどを製造。国内では、累計555億円を投資して新たに2つの生産棟を愛知県尾張旭市に建設しており、2025年に第一生産棟、2027年に第二生産棟が稼働する予定だ。こちらでは、まずはサーボモーターを生産する。
「時代の流れは早く、多様化、複雑化してきている。こうした流れに対応していくためには、先進化されたコンポーネントの技術に加えて、デジタルの技術も欠かせなくなる。製造現場のリアルな空間にバーチャル、そしてデータを一体化させて、製造のサプライチェーン、エンジニアリングチェーン全体を効率化する取り組みを行っている」(田中氏)
三菱電機は2003年に工場全体を見える化する「e-F@ctory」のコンセプトを発表している。e-F@ctoryのアーキテクチャは生産現場、ITシステム、それらを連携するエッジコンピューティングの3階層に分かれており、FA技術とITを活用してモノづくりを進化させる取り組みだ。
「これは、デジタル化をしよう、何かを変えていこうというものから始まったのではなく、名古屋製作所の現場生産改善活動から生まれた。当時、シーケンサー、サーボモーターなどは名古屋製作所でも使われており、そのコントローラー機器からデータを取り出して解析することで、現場の改善やリードタイム短縮、品質においても上流工程の設計にフィードバックして改善していく取り組みを重ねていった。こうした取り組みをユーザーの改善活動につなげていこうと発表したのが、e-F@ctoryのコンセプトになる」(田中氏)
2024年には三菱電機がデジタル基盤「Serendie」を発表した。Serendieは、2023年4月に設立したDXイノベーションセンターが中心になって構築したデジタル基盤であり、データ分析基盤やWebAPI連携基盤など4つの基盤で構成され、社内外の技術、ノウハウを活用したデジタルサービスの実現を推進する。FA領域においても、Serendieの活用を模索している。
「ユーザーの製造現場に伺うと、『DX(デジタルトランスフォーメーション)をやらなければいけないが、どこから手を付ければいいのか分からない』という話をよく聞く。データをどう集め、格納し、整理するのか、そのデータをどのように活用するのかという最初の壁が超えられない。そうした悩みを早く解決できるように今取り組んでいる」(田中氏)
具体的には、現場にあるFA製品群を通して、データをより簡単に、より早く収集し、格納できる基盤を構築。その基盤はFA領域だけではなく、三菱電機の統一された事業データ基盤の中に格納され、Serendieを通してそれぞれのアプリケーションに生かされる。
「ユーザーの課題を解決するさまざまなアプリケーションを社内の実証実験を通して確認している。データを集めるためには、接続の部分で複雑なノウハウや知識、機材などが必要になる。それらをいかに簡単に接続してデータベースに上げるかも名古屋製作所の方で考えている。また、e-F@ctoryのデータ、ノウハウをSerendieに連結させ、より広範囲な知識に広げていくことも進めている」(田中氏)
「これからの100年を切り開いていくために、デジタル技術、デジタル先鋭化された製品を使っていきたい。リアルタイムの制御技術を中心に継承し、次に来る製品を生み出すためのオープンなイノベーション環境を用意。進化と対策の両輪を回しながら、次の100年を切り開いていきたい」(田中氏)
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