西日本製鉄所の基幹システムで過半をオープン環境に完全移行:製造IT導入事例
JFEスチールは、西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)で利用している基幹システムの薄板品種、電磁鋼板品種、全品種出荷の領域をオープン環境に完全移行した。
JFEスチールは2024年9月5日、JFEシステムズとアクセンチュアの支援を受け、西日本製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)で利用している基幹システムの薄板品種、電磁鋼板品種、全品種出荷の領域をオープン環境に完全移行したと発表した。
この移行により、高炉を保有し24時間連続操業している大規模製鉄所で、かつ国産メインフレーム(富士通製)である西日本製鉄所倉敷地区の基幹システムの過半がオープン環境へ移行した。
5000万STEP以上のシステム規模のうち過半がオープン環境へ
同社は、各製鉄所/製造所の基幹システム刷新を推進し、これまでに本社の基幹システムおよび仙台製造所(仙台市宮城野区)のオープン化を完了した。
一方、西日本製鉄所倉敷地区のような大規模一貫製鉄所では、原料の荷揚げ、貯蔵から製銑、製鋼、圧延などの製造工程を経て、最終製品として出荷するまでの一連の多くの設備が広大な敷地に配置されている。オープン環境への移行には現行システムの一時的な停止が伴うため、各工程での長時間停止を避け、限られた時間内での本番環境への移行が必要となる。
西日本製鉄所倉敷地区の基幹システムでは、形鋼品種領域を2023年5月にオープン化して以降、順次オープン化を進めている。今回のオープン化により、5000万STEP以上のシステム規模のうち過半がオープン環境への移行を完了した。西日本製鉄所倉敷地区では2024年度末のオープン化完了を目指してリフレッシュを継続する。
同社の製造部門での基幹システムでは、汎用的なパッケージを適用するのではなく、長年にわたる独自の製造技術で蓄積されたシステムの価値を重視し、業務ロジックはそのままでレガシー言語からオープン言語に変換し、プラットフォームを最新のクラウド環境へ移行している。
西日本製鉄所倉敷地区の基幹システムリフレッシュでは、プログラミング言語にCOBOLを利用した従来システムを、プログラミング言語にJavaを用いた新システムに置き換えている。
全社のシステムにおける完全オープン化は、同社の次期中期経営計画期間中(2025〜2027年度)の完了を目指していたが、社内でのノウハウ蓄積により各地区とも順調に進捗しており、2年前倒しの2025年度末完了を目指して引き続きシステムリフレッシュを進めていく。
また、カーボンニュートラルに向けた取り組みが世界的に進む中、西日本製鉄所倉敷地区では電磁鋼板の能力増強に着手し、大型電炉の導入を検討するなど、グリーントランスフォーメーション(GX)に取り組んでいる。システムリフレッシュを順次進めることで最新のシステム環境でのデジタルトランスフォーメーション(DX)とGXを推進し、製造基盤の強化と2030年度に従来比30%以上のCO2削減目標の達成を目指す。
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