東武と日立の生体認証共通基盤「サクララ」が本格展開、上新電機やファミマも採用:スマートリテール(1/2 ページ)
東武鉄道と日立製作所は、両社が提供している生体認証を活用したデジタルアイデンティティーの共通プラットフォームの本格展開を始める。サービス名称を「サクララ(SAKULaLa)」と名付け、東武グループ外となる上新電機やファミリーマートにも展開を広げて2026年度までに全国100カ所以上に順次導入を進めていく。
東武鉄道と日立製作所(以下、日立)は2024年9月3日、東京都内で会見を開き、両社が提供している生体認証を活用したデジタルアイデンティティーの共通プラットフォームの本格展開を始めることを発表した。東武グループ外となる上新電機やファミリーマートにも展開を広げて、2026年度までに全国100カ所以上に順次導入を進めていく。また、これまで生体認証の方式として指静脈認証のみを用いていたが、2025年度から顔認証も採用する方針である。
会見では同プラットフォームを用いたサービスの名称を「サクララ(SAKULaLa)」と名付けたことに加えて、サクララの普及拡大に向けた公式キャラクター「サクラッコ&ララガイ」も発表した。
会見の登壇者。左から、日立の石田貴一氏、東武鉄道の前田隆平氏、タレントの辻希美さん、公式キャラクターのサクラッコとララガイ。辻さんは会見後半に登壇し、実際にサクララを利用体験した上で、手ぶらで決済ができることが子連れでの買い物などに役立つだろうといった感想を述べていた[クリックで拡大]
東武鉄道 執行役員 経営企画本部長の前田隆平氏は「東武グループは鉄道と不動産という社会インフラを有しているが、このプラットフォームを第三の社会インフラとして展開し、あらゆるシーンで生体認証を使えるようにしていく」と語る。また、日立 マネージド&プラットフォームサービス事業部 事業部長の石田貴一氏は「労働力不足が課題となる中で生体認証は省人化や無人化に貢献し、デジタル利用の年代間格差も小さくする効果がある。また、本人であることを、平時だけでなく災害などの非常時にも、リアル、オンラインを問わず、安全、便利、迅速、ワンストップで証明できる」と説明する。
「利用客にも店舗側にも有益なサービス」
同プラットフォームは2024年4月から越谷店(埼玉県越谷市)など東武ストア3店舗での先行実証を開始している。登録人数は実証開始段階の2000人から8月時点で3700人まで増えている。9月からは新たな東武ストアの店舗での利用が可能になることもあり、同月末で5000人以上の登録を見込んでいる。
これまでの登録者3700人については、デジタル技術への対応が若年層と比べて遅れがちとされる50歳代以上が約半数を占めているという。越谷店における継続利用率(登録キャンペーン終了後の1カ月間に再度利用した割合)は76.3%で「7割以上が継続利用しているという数字はポジティブに受け止めている」(東武鉄道 執行役員 経営企画本部長の前田隆平氏)という。また、決済時間についても、クレジットカードを用いる場合の約50秒に対して、指静脈認証は約25秒と半減するなどの効果が得られている。前田氏は「レジ時間短縮は利用客にとってのメリットだが、そこから直結するレジ回転率の向上や、酒類販売などの年齢確認もセルフレジで行えて省人化できるなど店舗側にとっても有益なサービスだ」と強調する。
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