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AGV活用で工作機械の組み立てを効率化、中村留は月480時間をいかに削減したのかメイドインジャパンの現場力(2/2 ページ)

中村留精密工業が新たに開設した工場において、AGV(無人搬送車)を活用した生産システムが稼働を始めた。運搬に関わる工数を月間480時間削減したという現場を訪ねた。

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朝には必要なものが全て手元に、人の運搬作業を480時間削減

 1つ目は、作業者がいない夜間に翌日の作業に必要な部品などを作業エリアに搬送する役割だ。今回導入した自動倉庫は工場の1階と2階をつなぐエレベーターの役割も兼ねており、前日に1階で配膳担当者が配膳したキットを自動倉庫に入れると、2階に運ばれてAGVでパレット102枚分のスペースを持つスタンバイエリアに集められ、その後、各組み立て作業を行う場所に運ばれていく。

 ボルトやOリングなどの部品は必要な数だけキットとして供給される。どの機種に何が必要かは社内のシステムで管理を行い、それを元に部品倉庫から運び出し、改めてキットとして整理する。以前は、作業者が自ら部品が並ぶ棚まで取りに行っていた。


スタンバイエリアに並ぶ部品

ボルトなどはキットとして配膳される

 2つ目は、2階で組み立ての終わったユニットを自動倉庫まで運ぶ作業だ。一部機種に関しては、このユニットの状態で在庫として確保することで、通常納期から約4カ月の短縮を図っている。3つ目は、完成したユニット同士を合体させる際などの工程間の移動だ。

 中村氏は「ボルト1本欠けていても工作機械を作ることはできない。それらの運搬というのは典型的な現場の負担であり、運搬がネックになってしまうと組み立てが計画通り進まない。AGVの導入によって作業者は朝、工場に来ると部品がそろっている状態で仕事を始めることができ、組み立て作業に集中できる」と話す。


ユニット組み立てエリア

自動倉庫の内部の様子 出所:中村留精密工業

 この取り組みによって、同社ではユニットの製作にかかっていた運搬時間を月当たり480時間削減することに成功。運搬専任の作業者3人は別エリアの運搬を担当することになった。

 作業者はタブレット端末でAGVへ指示を出す。今回、AGVに指令を出す配膳管理ソフトウェアは自社で開発した。このソフトウェアでは各ユニットの状態、優先順位や組み立てスケジュールを管理しており、作業者が常に優先順位の高い仕事ができるようになっている。配膳、組み付け、出庫または保管などの流れを自動化し、システム化していくことでより作業に集中できる環境を構築する。


タブレット端末からAGVに指示を出す

配膳管理ソフトウェアも自社開発した

 社内公募で決まった新工場の名称であるMAGIは、聖書に登場する東方の三賢者のことだ。キリストの生誕の際に出現したとされる3人の賢者と第11、12、13工場を重ね合わせ、3つの工場が三位一体となって賢者のようにIoT(モノのインターネット)などを駆使しながら、製造現場の負担を削っていくという意味が込められている。


充電中のAGV

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