Dataikuは三菱電機のデジタル基盤「Serendie」に何をもたらしたか:製造IT導入事例
Dataikuは同社製品を活用したAI活用事例などを紹介するイベント「Everyday AI Summit」を開催した。本稿では三菱電機の活用例を取り上げて紹介する。
AI(人工知能)やデータ分析のプラットフォームを展開するDataikuは2024年7月19日、同社製品を活用したAI活用事例などを紹介するイベント「Everyday AI Summit」を開催した。本稿では三菱電機の活用例を取り上げて紹介する。
「熱供給事業者向けソリューション」などを提供
AIプラットフォーム「Dataiku」はデータの取り込みから可視化、分析、管理に加えて、機械学習モデルの作成やテスト、実装のための機能を提供し、企業が予測モデルによるE2E(End to End)で提供する。これらの機能はノーコードで扱えるため、データの非専門家であっても専門家と共通のプラットフォーム上で協働できるようにする。AIドリブンな組織戦略の実現を支援する。Dataikuの日本法人であるDataiku Japan 取締役社長 カントリーマネージャーの佐藤豊氏は、同社は「ユニバーサルAIプラットフォーム」の実現を目指しているとして、「組織のメンバーやデータ、大規模言語モデル(LLM)などのテクノロジーをプラットフォーム上に集積し、さらにはAIの全工程におけるガバナンスをしっかりとした形で、企業のAI戦略にアラインしていきたい」と説明する。
このDataikuを三菱電機はデジタル基盤「Serendie」に活用している。Serendieは三菱電機が展開するFA機器や電力機器、昇降機、空調機器、家電/住宅設備機器、鉄道電機品などのハードウェア製品からデータを収集し、それぞれのデータを掛け合わせた新しいソリューションを生み出す共通基盤だ。例えば、FA機器と電力機器のデータを合わせることで、カーボンニュートラルの実現やサプライチェーンマネジメントの最適化を図るソリューションが構築できる可能性がある。
Serendieを構成する技術基盤には、「データ分析基盤」や「Web API連携基盤」「サブスクリプション管理基盤」「お客様情報基盤」などがある。この内、Dataikuをデータ分析基盤に活用しているのはデータ分析基盤だ。ハードウェア製品から収集したデータを一度、Snowflakeで構築したデータプールに保管して、Dataikuで分析する仕組みを作った。
実際にDataikuを活用して構築したソリューションもある。それが2024年5月に発表した「熱供給事業者向けソリューション」だ。製造業やビルオーナー、熱供給事業者向けに電力と熱のエネルギーコスト削減や脱炭素推進を支援するソリューションで、コンサルティングから設備単位での熱システム設計や給湯・産業冷熱機器の提供、エネルギーマネジメントシステムを活用した電力や熱エネルギーの効率的な運用支援をワンストップで提供するとしている。
Dataikuはソリューションの中で電力や熱エネルギー需要の予測モデルの構築などで使われている。予測に用いるべき説明変数は顧客ごとに異なるため、ディスカッションしながら徐々に改良していく必要がある。三菱電機 DXイノベーションセンター プラットフォーム設計開発部 部長の水口武尚氏は、「ディスカッションの際にDataikuでデータを可視化しながら話し合えるため、(改良プロセスを)非常に高速に回していけると期待している」と語る。
さらに設備機器の運転計画を見直す際に、需要家ごとの熱取得量の特性を可視化することで、需要家ごとの改善点を発見しやすくする効果もあるようだ。水口氏は、「1年分の熱取得量のデータを分析したが、改善点をまとめた顧客への提案書作成まで20営業日で実施できた。かなり早くできたと考えている。Dataikuの可視化ツールがかなり貢献してくれた」と説明する。
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