溶接部の疲労強度(その2):CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる(11)(3/6 ページ)
金属疲労を起こした際にかかる対策コストは膨大なものになる。連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」では、CAEを正しく使いこなし、その解析結果から疲労破壊の有無を予測するアプローチを解説する。連載第11回は、前回に引き続き「溶接部の疲労強度」について取り上げる。
まず、式9〜12の方法です。zに関する応力は全てゼロなのでA、B、Cは以下となります。
そして、以下に記した応力を代入します。
式9は以下となります。
式18より、1つの根はゼロです。残り2つの根は以下となります。
第一主応力がプラス値、第三主応力がマイナス値とすると、主応力は以下となります。
では、図10に示したように荷重ベクトルの引き算をします。荷重は以下となります。
応力は以下となります。
ベクトルの引き算をした場合もzに関する応力は全てゼロなのでA、B、Cは以下となります。
応力を代入します。
式19にA、Bを代入します。
式がたくさん出てきましたが、式20と式28は一致しました。つまり、荷重による6つの応力成分σx1、σy1、σz1、τxy1、τyz1、τzx1と荷重による6つの応力成分σx2、σy2、σz2、τxy2、τyz2、τzx2との差から求めた主応力と、2つの荷重の差から求めた主応力は一致しました。ということは、荷重の差を荷重条件としてCAE解析を1回行うと、その結果の第一主応力分布が応力レンジ分布となります。これならば3次方程式を解くこともなく、解析も1回で済みますね。
2つの荷重の差はベクトルであって、ベクトル、とは全然異なるあさっての方向を向いていたため、前述したことは直観的には気付かないのですが便利な方法だと思います。
では、数値を代入しましょう。図12に最大荷重と最小荷重の差()を荷重とした解析結果を示します。ここから、図9の応力評価点の主応力を読み取った結果を表3に示します。今回使ったソフトではσ2を出力できなかったのですが、σ1とσ3は表2の値と一致しました。
ここで提案です。
最大荷重時の荷重ベクトルと最小荷重時の荷重ベクトルが正反対でない場合、最大荷重時の荷重ベクトルと最小荷重時の荷重ベクトルの差のベクトルを荷重ベクトルとして解析し、その第一主応力を応力レンジとする。
最大荷重時の荷重方向と最小荷重時の荷重方向が正反対にならないときの応力レンジの求め方は、どの文献にも見当たらないので、読者の皆さんは、
- ここでの方法を採用する
- 自分で考える
- 次に述べる破壊力学を使う
の三者一択になるのでしょうか。
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