産業メタバースで変わりゆく都市づくり、進むスマートシティ構築の未来(後編):デジタルツイン×産業メタバースの衝撃(6)(2/6 ページ)
本連載では、「デジタルツイン×産業メタバースの衝撃」をタイトルとして、拙著の内容に触れながら、デジタルツインとの融合で実装が進む、産業分野におけるメタバースの構造変化を解説していく。
航空レーザーやモビリティセンシングで作成した3D点群をオープンデータ化
静岡県は点群取得に際して、航空レーザーや、自動車に搭載したセンサーを通じたセンシングを行っている。上空約2000mからレーザーを照射した計測結果に加えて、グリーンレーザーを海、河川などに照射して測定した水面、水中の地形などレーザー測深のデータ、MMSと呼ばれる自動車搭載センサーでとったデータを統合する。
これにより、一般的な空中写真のみでは取得できない海や河川の内部や、木々でおおわれている地表面などもセンシングできる。これらの3D点群データを、誰でも2次利用できる形でオープンデータ化しているのだ。
VIRTUAL SHIZUOKAの取り組みがメディアなどで広く注目されるきっかけになったのが、2021年に発生した静岡県熱海市の土石流災害だ。通常、人手での測量では1カ月以上かかるところを、災害発生の翌日にはドローンを飛ばしてセンシングし、1週間以内に点群のデジタルツインデータの分析を通じて「盛り土」の存在や崩壊土砂量を推定した。
後述するデジタルツイン企業のシンメトリーディメンションズなどと連携して、産学官の16組織、企業と「静岡県点群サポートチーム」を組織して活動してきた成果だ。過去の点群データとの比較により、盛り土の特定とともに、土量の蓄積場所や、流出経路を分析し2次災害を防ぐための分析を継続的に行っている。
南海トラフ地震における津波浸水シミュレーションにも活用
先述の通り、静岡県は南海トラフ地震での津波のリスク対応にも迫られている。ここでもデジタルツインが活用できる。点群データを活用したVR(仮想空間)で自分の家の前に立ってもらい、バーチャル上で想定されている津波をシミュレーションし、経験してもらうという使い方をしている。これにより住民の避難意識を向上するとともに、第2波や第3波の影響も踏まえた避難経路の検討に生かしてもらえるようにする。
災害リスクや避難意識を向上する上では、自らの家や街をリアルに再現した3D空間での啓発が効果を持つ。それぞれの家でどのように浸水するかの詳細なシミュレーションが可能なのも、ほぼ全域で点群データを整備している静岡県だからこそ実施できる取り組みだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.