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産業メタバースで変わりゆく都市づくり、進むスマートシティ構築の未来(後編)デジタルツイン×産業メタバースの衝撃(6)(1/6 ページ)

本連載では、「デジタルツイン×産業メタバースの衝撃」をタイトルとして、拙著の内容に触れながら、デジタルツインとの融合で実装が進む、産業分野におけるメタバースの構造変化を解説していく。

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連載概要と本記事の位置付け

 本連載では、「デジタルツインとの融合で実装が進む産業メタバース」をタイトルに連載として、拙著『メタ産業革命〜メタバース×デジタルツインがビジネスを変える〜』(日経BP)の内容にも触れながら、本連載向けに新たに追加する内容を含めて、産業分野におけるデジタルツインとの融合により実装が進む産業分野におけるメタバースの構造変化について解説していく。

本連載の構成

「防災」が3D化のアーリーアダプターに

 スマートシティや都市の3Dデータ活用において、自治体の位置付けがより重要になってきている。静岡県や東京都のように先行する自治体では、大企業やスタートアップ、アカデミアを巻き込み、つないでいくことで新たなイノベーションを主導するプラットフォームが出てきつつある。

 メタ産業革命時代には、3D都市データは新たな社会インフラとなりうる。これら社会インフラを自治体が積極的に整備し、地域の競争力を活性化していくことが求められるのだ。

 下記の渋谷区のように、区/市単位での取り組みも活発化している。市区町村では実際に住民台帳を持っており、行政サービスを提供する単位となる。その観点で3Dをはじめとしたデジタルでのサービスを実行して、反応をもとに素早く「アジャイル」にアップデートしていけることが市区町村の強みとなる。

 3D都市データの整備は、すぐに何らかの効果がでるわけではないためメリットが訴求しづらい。ただ防災分野は人の命に関わる課題であり、すぐにでも投資をしなければならない。このため、防災を最初のきっかけとして整備を進めるケースが多い。

 そこで土台が整うと、自動運転や観光など他分野に適用範囲を拡大していける。都市のオープンデータ化も、阪神淡路大震災や東日本大震災を契機に取り組みが進んできた背景がある。防災は広域で取り組む必要があるため、局所最適ではなく、全体最適の視点で取り組める要素もある。

 静岡県の熱海の土石流で3D点群データが効果を発揮した事例は、各自治体で3D活用の検討を進めるきっかけとなった。防災をきっかけに3D化を積極的に進め、自動運転や空飛ぶクルマ、建設/インフラ管理、観光など幅広い領域に横展開している静岡県の「VIRTUAL SHIZUOKA」の事例を紹介する。

静岡県のほぼ全域を点群としてデジタルツインを生成

 VIRTUAL SHIZUOKAでは、静岡県のほぼ全域をセンシングして、点群データによる3D化を進めている。2019年から取得を開始し、一部南アルプスの山岳地帯をのぞき、人口カバー率約100%で静岡県を3D化した。

 プロジェクトを推進する最も大きな要因が、今後想定される災害への備えだ。静岡県は南海トラフ地震とそれによる津波や、富士山の噴火など、多くの災害リスクを有している。これらへの備えから、日本の中でも先んじて県のデジタルツイン化をVIRTUAL SHIZUOKAとして推進してきたのだ。

※3D空間上での位置や色の情報を持つ点群が集合したデータで、点が集まることによって物体の形状や質感を表現する

静岡県における点群データ例
図1:静岡県における点群データ例 出所:静岡県

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