Sigfoxを引き継いだUnaBizにKDDIとKCCSが出資、目標は世界累計1億台接続:製造業IoT(2/2 ページ)
LPWAネットワークのSigfoxを展開するUnaBizは、KDDI、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の協力により、プレシリーズCラウンドとして合計2500万米ドル(約37億円)の出資を受ける契約の締結を完了した。
防犯でアンチジャミングを生かす、位置測位ソリューションの精度も向上
Sigfoxのグローバル接続デバイス数1350万台のうち、防犯が700万台、サプライチェーンと物流が200万台、公共インフラ設備が280万台となっている。防犯では、自動車の盗難防止を目的としたカーセキュリティの用途でフランスや南アフリカなどで利用されている。防犯ではモバイル通信を用いる場合もあるが、ネット通販などで安価に購入できるジャミング装置で対抗できることが課題になっている。Sigfoxは通信の周波数帯や方式といった特性からジャミング装置で通信を妨害されない「アンチジャミング」が特徴となっており採用が拡大しているところだ。なお、自動車用アンテナを手掛ける原田工業は、UnaBizとの協業でSigfox対応のフィルムアンテナを用いた自動車業界向け資産追跡ソリューションを開発している。
サプライチェーンと物流では、GPSを用いないSigfoxの位置測位ソリューションが強みを発揮している。当初から提供していた、Sigfoxの基地局やデバイスを用いた三角測量に基づく「atlas Native」は位置精度が1〜数kmとなっていたが、近年はWi-Fiのジオロケーション情報と組み合わせた「atlas Wi-Fi」や、Wi-Fiのジオロケーション情報に関する最新データをSigfoxのクラウド上で機械学習することで位置精度を50〜100mまで高めた「atlas Wi-Fi ML」を提供していた。さらに2024年からは、atlas Wi-Fi MLのノウハウをatlas Nativeに適用してSigfoxネットワークだけで50〜100mの位置精度を実現した「atlas Sparks」のβサービスを始めている。サプライチェーンと物流の日本の顧客としては、タイヤ内圧を遠隔モニタリングする「Bridgestone T&DPaaS」を展開するブリヂストンや、物流用レンタルパレットを手掛ける日本パレットプールなどがある。またSigfoxの位置測位ソリューションを活用してKCCSが開発した開封検知ソリューション「SeeGALE」については「UnaBizが世界へのゲートウェイの役割を果たして日本のソリューションを紹介していきたい」(ボン氏)という。
公共インフラ設備で最も大きな事例となっているのが、ソラコムとの連携で導入を進めたニチガスのLPガス向けスマートメーターだ。280万台の接続デバイス数のうち実に140万台がニチガス向けとなっている。今後導入が進みそうなのが南アフリカで、同国財務省が1500万台の水道メーターのスマート化に向けて入札を行っており、その要件としてSigfoxをメインプロトコルとして指定しているという。
UnaBizはSigfoxを傘下に収めてから事業拡大に向けてさまざまな施策を展開している。まずは2023年4月にSigfoxをオープンソース化してGitHubで公開した後、同年6月には競合のLPWAネットワークであるLoRaの業界団体であるLoRaアライアンスに参加した。これにより、STマイクロエレクトロニクスやLoRaを推進するSemtechがSigfox対応チップセットを投入するようになった。また、2024年1月にはSigfoxのオープンソースの情報を基に、機能をアップリンクのみに絞って低コスト化を図ったチップセットがHoltekから発売されている。そして、同年5月には基地局側の消費電力を18分の1にするソフトウェアアップグレードを行い、7月には先述のatlas Sparksを発表したところだ。今後は9月をめどに、サブ0Gプログラムとして位置測位ソリューション向けの低コストのデバイス開発も目指しているという。
ボン氏は「自社やネットワークパートナーとの連携で通信をカバーする国や地域を70以上まで広げてきたが、今後が衛星ネットワークを活用して世界中で利用できるようにしていく。Sigfox対応デバイスもより小型かつ低コスト、低消費電力にする。東南アジアと中東を中心にユーザーを拡大し、できるだけ早い段階でグローバルデバイス接続数1億台を達成したい」と述べている。
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