助手席と運転席に異なる映像を見せるディスプレイ、有機ELにも対応:コックピット(2/2 ページ)
ジャパンディスプレイは、1つのディスプレイで運転席と助手席向けにそれぞれ異なる映像を表示しながら、左右からのタッチ操作を識別できる車載用ディスプレイ「2ビジョンディスプレイ」を開発した。
コスト面やデザイン面でもメリット
2ビジョンディスプレイには、コスト面とデザイン面でのメリットがあるという。助手席側のディスプレイでの表示が運転中の妨げにならないよう、現在は運転席から見えないようにするプライバシー機能を搭載しなければならない。2ビジョンディスプレイであれば、従来は表示を運転席から見えなくするためのコストを抑えられる。また、助手席用と運転席用に2枚のディスプレイを使っていたのを1枚にすることでのコスト低減も図れるとしている。
また、助手席向けの車内エンターテインメント充実のため、ディスプレイを大きくしたいというニーズがある。ただ、エアバッグとの搭載位置との兼ね合いで、ディスプレイを縦方向に大きくするのは限界があるという。2ビジョンディスプレイであれば、運転席と助手席の間のセンターインフォメーションディスプレイで助手席の乗員も大画面のエンターテインメントを楽しめるとしている。
さらに、高級車ブランドを中心に、「ディスプレイを増やすことはインテリアデザインの美学に反するという声もある。ディスプレイを増やす以外のやり方が欲しいというニーズを聞いている」(キャロン氏)。
運転席と助手席の操作を識別
2ビジョンディスプレイは静電タッチパネルだが、運転席と助手席のそれぞれからのタッチ操作を識別する仕組みの詳細は非公開とした。タッチパネルのコントローラーのアルゴリズムを独自に開発することで実現した。民生用では採用実績のある方式だという。
全画面でタッチ操作を識別し、助手席からディスプレイの右端、運転席からディスプレイの左端を操作しても(右ハンドルの場合)、同時に複数の指でタッチ操作しても対応できる。「正しく判定できないのは、運転席と助手席の人間が手をつないでタッチするような場合。独立して操作する必要がある」(ジャパンディスプレイの説明員)。
識別に生体情報は使用しておらず、1人の人間が運転席から助手席に移動すると、助手席側からの操作だと判定される。操作する人の識別にカメラなども使用していない。静電タッチパネルなので、コストの負担は少なく、技術的にも信頼性があるとしている。
自動車での有機ELディスプレイ採用拡大に期待
ジャパンディスプレイは、自動車での有機ELディスプレイの普及に期待を寄せる。キャロン氏は「黒を光らせないパーフェクトブラック、色の鮮やかさ、応答速度の高さなど、自動車業界もOLEDのメリットをよく知っていて、OLEDが求められている」という。
有機ELディスプレイは液晶ディスプレイよりも湾曲させやすく、乗員が丸く囲まれたようなコックピットもデザインできる。ただ、有機ELディスプレイは一般に、明るさや焼き付き、寿命などの課題があり、これらは車載用では特に弱みとなる。
ジャパンディスプレイでは有機ELディスプレイ「eLEAP」を2024年12月から量産する。ファインメタルマスクではなくフォトリソグラフィーを採用し、発光エリアを広くしたことが特徴だ。中型サイズ以上の有機ELディスプレイは高輝度化に限界があったが、従来品の3倍の明るさとなる1600cd/m2を実現した。屋外で画面を見るときには1000〜1200cd/m2が必要だとされており、十分な明るさを確保した。
他社は発光層を2層に増やして輝度を高めているのに対し、eLEAPは1層で1600cd/m2を達成。発光層を2層に増やせば3000cd/m2まで輝度を向上できるという。高輝度化は長寿命化にも寄与する。
有機ELディスプレイは同じところを光らせると素子が劣化し、焼き付きが発生する。メーターや走行距離など車載用では決まった表示が多くなるため、こうした素子の劣化を防ぐことがカギになる。eLEAPは発光エリアの大きさを生かし、全体を優しく光らせることで素子にかかる負荷を軽減し、長寿命化を図る。「3倍の輝度なので、同じ輝度であれば3倍の寿命を確保できる。車載用での強みになる」(ジャパンディスプレイの説明員)。
eLEAPの強みや2ビジョンディスプレイの技術を生かして、車載用有機ELディスプレイで競合他社との差別化を図っていく。
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