シャッと出せてシュッと戻る「コンベックス」の仕組み:100円均一でモノの仕組みを考える(3)(3/3 ページ)
本連載「100円均一でモノの仕組みを考える」では、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解、観察して、その仕組みや構造を理解し、製品開発の過程を考察します。連載第3回のお題は「コンベックス」(金属製巻き尺)です。
コンベックスと似た構造の「コードリール」
コンベックスと同じような構造をしているのが「コードリール」です(図8)。
コードが収納された状態で、コードを指で引き伸ばして任意の長さで離すと、その位置でコードが固定され、再度引き伸ばして離すとコードが巻き戻ります。こちらも、コンベックスと同じく巻き取りの機構にぜんまいバネが使われていますが、最大の違いは、“最初に引き伸ばして離した位置にコードが固定される”という点です。
実際に、コードリールを分解してみると、コンベックスと同様にぜんまいバネが組み込まれたドラムを確認できます。
さらに、このドラムをよく見てみると、ドラムに溝が付いており、その溝に合う球があることが分かります(図9)。このドラムの溝と球の動きにより、引っ張る方向に対してはフリーに伸ばせ、戻るときには引っ掛かるという動きを実現しています。
引っ張り方向には球が回りやすい溝が掘ってあり、容易に引き伸ばすことができます。このとき、ぜんまいバネの力で逆方向に戻ろうとする力が働きますが、戻る方向には球が引っ掛かる形状が設けられており、それがストッパーの役目を果たしてコードの巻き戻りを防ぎます。
そして、この固定された状態で、再度引っ張り方向にコードを引いて、指を離すと、今度は球が逆方向にスムーズに回る溝に移動し、コードを勢いよく巻き取ります。このように、コードリールの構造は“絶妙な溝の切り方”が肝となっています。
コンベックスやコードリールのようなぜんまいバネを用いた製品は、掃除機の電源コード、引くと走り出すプルバック式のクルマの玩具など、さまざまなところで使われています。直接、目にする機会は少ないかもしれませんが、生活に欠かせない仕組みの一つだといえます。 (次回へ続く)
著者プロフィール:
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。株式会社モールドテック 代表取締役(2代目)。『作りたい』を『作れる』にする設計屋としてデザインと設計を軸に、アイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド『factionery』では「第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞」を受賞している。
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