「あの図面どこだっけ……」の手間を解決、ミスミが図面データ検索AIサービス:メカ設計ニュース
ミスミは2024年8月より機械部品の図面データ検索AI「meviy Finder」を提供する。
ミスミは2024年6月28日、東京都内で記者会見を開き、同年8月よりサービスを開始する機械部品の図面データ検索AI(人工知能)「meviy Finder」の概要を説明した。
AIサービスを付加した図面の無償クラウドフォルダ
ミスミが提供するmeviyは、機械部品について、設計データをアップロードすると即座に自動で見積もりを行い、さらに最短1日の納期で出荷するクラウドのプラットフォームだ。製造できない設計データがアップロードされると、どのように設計変更すれば製造できるようになるのかも提案する。価格は納期ごとに表示され、長く設定するほど割引率が大きくなる。
2019年の本格展開以降、切削加工品、板金加工品に加えて、2022年から旋盤加工部品、2023年には溶接部品に対応。2021年には欧州、2022年に米国、2023年に中国、2024年にアジア(韓国)でサービスを始めた。これまでにユーザー数は16万人、設計データのアップロード数は2500万件を突破している。
ミスミ 常務執行役員 吉田光伸氏は「meviyが提供しているのは部品ではなく時間だ。人口減少や働き方改革によって、日本の製造業が“使える時間”はどんどん減っており、仕事のやり方を劇的に変えないと生き残れない。設計、調達、製造、販売というバリューチェーンにおいて一番デジタル化が進んでいないのが調達だ。これまでは、一個一個の部品について紙の図面を書いて複数社に見積もりして納期を待っていた。それに対してAIを活用した自動見積もりと、デジタルマニュファクチャリングによって、調達の領域をDX(デジタルトランスフォーメーション)して、時間を生み出していく」と語る。
新たにサービスを始めるmeviy Finderは調達以外の業務の効率化を目指している。ミスミが提供するクラウドのフォルダに図面をアップロードすると、図面に記載されている外径サイズなどの寸法、記号、テキストなどの情報を図面認識AIが自動的に解析、蓄積する。従来の図面情報の手入力によるデータ登録作業が不要となる他、蓄積された情報をキーワードで簡単に検索することで、過去の図面を探す手間を大幅に省く。また、AIがサイズを含めた図面データの類似性を判断し、蓄積されたデータから類似図面を迅速に検索する機能も搭載している。クラウドストレージのように、メンバーで共有することも可能だ。ユーザーはメールアドレスを登録するだけでこれらを無償で利用できる。
ミスミでは2D図面に特化したmeviy 2Dを2023年から展開している。2D図面をアップロードするとAIが図面を解析して見積もりを作り、パートナー企業から最適な工場を選定するというサービスだ。既にユーザー数は1万人を突破したという。
ミスミ meviy Lab ジェネラルマネジャー 芝田篤史氏は「AIに欠かせないのは教師データだが、ミスミではカタログ標準品で培った膨大な商品情報と図面データを持っている。これらの良質な教師データを使って以前から、類似図面検索AIや図面認識AIを開発してきた。既に適用してきた技術を生かして、meviy Finderというサービスとして開発した」と話す。
ミスミが行った調査でも、効率化したい業務を尋ねると、「過去の図面検索」「過去の類似品の見積もり結果の検索」「図面の共有」という回答も多かったという。吉田氏は「多くの企業では、過去数十年分の図面を書庫などに紙で保存しているというのが実情だ。その紙の図面を探す手間を解消できないかと考えた」と話し、芝田氏も「図面の検索、共有、管理に関する課題が残存している。これらに関しては、meviyでは対応できていないお困りごとだ。meviy Finderはまだ残っている大きな負の資産の解消を目的としたサービスだ」と述べる。
今後は、meviy Finder内の図面に対して、meviyの見積もり結果が表示されるなど、meviyとの連携も計画。3D図面への対応も予定している。
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