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サステナビリティなモノづくりを実践するレノボ、「ThinkPad」の見えざる進化CNTF 2024春 講演レポート

アイティメディア主催のライブ配信セミナー「カーボンニュートラルテクノロジーフェア 2024 春」の基調講演に登壇したレノボ・ジャパンの講演「ThinkPad開発で実践するサステナビリティへの取り組み」の模様をダイジェストで紹介する。

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 アイティメディアが運営する産業向けメディア「MONOist」「EE Times Japan」「EDN Japan」「スマートジャパン」は2024年6月3〜4日、ライブ配信セミナー「カーボンニュートラルテクノロジーフェア 2024 春」を開催した。本稿では、同セミナーで「ThinkPad開発で実践するサステナビリティへの取り組み」をテーマに講演を行った、レノボ・ジャパン 大和研究所 サステナブルテクノロジー&メカニカルQbD シニアマネージャーの天野将之氏による基調講演の模様をダイジェストで紹介する。

サステナブルなモノづくりを強化するレノボ

 レノボでは、ESG(環境、社会、ガバナンス)を柱に、多様なプログラムや活動を通じてサステナビリティの実現に貢献するイノベーションを推し進めている。

 そのうち環境に関しては、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量のネットゼロ(実質ゼロ)達成を目指して取り組みを推進。2030年度までの中期目標として、Scope1&2に対してはGHG排出量の50%削減を、Scope3については販売したレノボ製品の使用による排出量を35%削減、レノボが購入した商品やサービスによる排出量を66.5%削減、上流の輸送と流通による排出量を25%削減するなどの目標を掲げている。

 そして、こうした目標達成の実現に向けた活動の中、「ThinkPad」の製品開発においても、設計、製造などを含め、サステナビリティの実現に貢献する多様な取り組みを強化している。

「ThinkPad」の内部部品や筐体部品に再生材を積極活用

 サステナビリティの実現に貢献するイノベーションの1つに挙げられるのが、再生材の活用だ。具体的な取り組みとして、まず、内部部品への再生プラスチック材の採用がある。ThinkPadでは、90%を超える高い再生材比率のリサイクル材を、スピーカーエンクロージャーやバッテリーフレームなどの内部部品、ACアダプターの筐体部分に積極採用している。

レノボ・ジャパン 大和研究所 サステナブルテクノロジー&メカニカルQbD シニアマネージャーの天野将之氏
レノボ・ジャパン 大和研究所 サステナブルテクノロジー&メカニカルQbD シニアマネージャーの天野将之氏 出所:レノボ・ジャパン

 レノボでは、使用済み製品から回収されたプラスチックを粉砕し、ペレット化(再資源化)したポストコンシューマー再生資源(PCC)プラスチックを、長期信頼性やパフォーマンスといったさまざまな角度から検証し、ThinkPad製品の開発に適用している。

 さらに、筐体部品では、リサイクルマグネシウムやリサイクルアルミなどのリサイクル金属も積極的に活用。剛性や信頼性などについても十分に検証しており、バージン材と同等の品質、質感などを確保しているという。

 ThinkPadの2024年モデル全シリーズでは、プラスチックや金属の再生材を筐体などに適材適所に採用しており、フラグシップノートPCの最新機種「ThinkPad X1 Carbon Gen 12」に関しては、航空機の製造工程などから排出された素材を再利用したリサイクルカーボンファイバーを、筐体の一部に活用している。

フラグシップノートPC「ThinkPad X1 Carbon Gen 12」
フラグシップノートPC「ThinkPad X1 Carbon Gen 12」[クリックで拡大] ※製品発表会時にMONOist編集部が撮影

「ThinkPad」だけでなく業界全体のモノづくりに貢献する低温はんだ技術

 もう1つのイノベーションが低温はんだ(LTS:Low Temperature Solder)技術の採用だ。レノボでは2017年から業界に先駆けて低温はんだプロセスの採用を開始しており、製造時のエネルギー削減、品質/信頼性の向上、CO2排出量の削減に貢献している。

 また、同技術は無償ライセンスとして業界に広く公開し、技術共有を行っている。これまでにライセンスを結んだ企業は30社を超えており、これからライセンスを結ぼうと計画している企業を合わせると50社にも上るという。

 低温はんだ技術は、はんだ付けの温度を250℃から180℃へ、約70℃下げることで、はんだ付けプロセスの際の製造エネルギーを削減。CO2排出量に換算すると約35%の削減効果がある。また、低温ではんだ付けを行うことで品質や信頼性なども50%近く改善できるとしている。レノボではこれまでに6000万台以上のPC基板を低温はんだ技術を用いて生産。これを温室効果ガス削減量に換算すると、1万1000t(トン)を超えるという。

製品の長期使用に向けた工夫や環境配慮型パッケージの採用も

 レノボが推進するサステナビリティの実現に貢献するイノベーションは他にもある。

 天野氏は、製品を長く使用するための“メンテナンス性”についても言及。ThinkPadでは、これまでもSSDやメモリなどの一部パーツについては、ユーザー自身で交換可能だったが、2024年モデルの「ThinkPad T14 Gen 5」「ThinkPad T16 Gen 3」では、部品交換や修理が容易に行える設計および機構を採用し、ユーザーフレンドリーかつシンプルな交換性の実現を図った。これにより、ユーザー自身で内蔵バッテリーパック(大容量バッテリー)が交換可能となった。

 「ThinkPadで定評のある高い信頼性と堅牢(けんろう)性に加えて、メンテナンス性を高めることで、製品をより長く使っていただけるようになる。その結果、製品および製品に使われている部品の廃棄量削減にも貢献できると考えている」(天野氏)

2024年モデルの「ThinkPad T14 Gen 5」「ThinkPad T16 Gen 3」では内蔵バッテリーパックなどをユーザー自身で容易に交換できるようになった
2024年モデルの「ThinkPad T14 Gen 5」「ThinkPad T16 Gen 3」では内蔵バッテリーパックなどをユーザー自身で容易に交換できるようになった[クリックで拡大] ※製品発表会時にMONOist編集部が撮影

 さらに、レノボでは製品開発だけでなく、パッケージや梱包(こんぽう)でのサステナビリティの実現も追求しており、以前からパッケージで使う材料の削減やサステナブル材料の活用を推し進めてきた。スタンダートパッケージやリテールパッケージでは2023年からプラスチックフリー化を推進しており、例えば、筐体を保護するパッケージなどに竹繊維が含まれる環境配慮材料を使用するなど、その取り組みを強化している。

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