「ThinkPad」が世界に発信する日本のモノづくり力、折り畳みノートPCもさらに進化:組み込み開発ニュース(1/3 ページ)
レノボ・ジャパンがオンラインで会見を開き、初代モデルの発売から30周年を迎えるビジネスノートPC「ThinkPad」の歴史を振り返った。また、ThinkPadの先進技術を実現する上で重要な役割を果たしてきた協業パートナーである東レ、シャープディスプレイテクノロジー、クラレが登壇し採用技術を紹介した。
レノボ・ジャパンは2022年10月5日、オンラインで会見を開き、初代モデルの発売から30周年を迎えるビジネスノートPC「ThinkPad」の歴史を振り返るとともに、ThinkPadの先進技術を実現する上で重要な役割を果たしてきた協業パートナーである東レ、シャープディスプレイテクノロジー(以下、SDTC)、クラレが登壇し採用技術を紹介した。
会見の登壇者。左から、レノボ・ジャパン 製品企画部 マネージャーの元嶋亮太氏、クラレ クラリーノ事業部長の熊野敦氏、東レ コンポジット事業部門長の溝渕誠氏、SDTC 取締役副社長の伴厚志氏、レノボ・ジャパン 執行役員常務 大和研究所の塚本泰通氏。元嶋氏は「ThinkPad X1 Carbon Gen 10 30th Anniversary Edition」、塚本氏は「ThinkPad X1 Fold」の2代目モデルを手に持っている[クリックで拡大] 出所:レノボ・ジャパン
30周年に合わせた新商品としては、NECパーソナルコンピュータの米沢事業場で生産する1000台限定販売の「ThinkPad X1 Carbon Gen 10 30th Anniversary Edition」と、折りたたみ可能な有機ELディスプレイを搭載する「ThinkPad X1 Fold」の2代目モデルを発売する。
インテルのプロセッサ「Core i7-1260P」と14インチの有機ELディスプレイを搭載し、メモリ容量32GB、ストレージ容量512GBとなるThinkPad X1 Carbon Gen 10 30th Anniversary Editionの価格は33万円(税込み)で、2022年10月5日からレノボ・ジャパンオンラインストアでの受注を開始する。ThinkPad X1 Foldの2代目モデルは、SDTC製の有機ELディスプレイを採用することでディスプレイサイズが13.3インチから16.3インチに拡大し、折り畳み時の隙間を最小化するなどの改良が図られている。最小構成時の価格は54万2300円(税込み)で、同年10月中旬以降にレノボ・ジャパンオンラインストアで発売する予定である。
ThinkPadの変わらないコンセプトは“オフィスから仕事を解放したい”
1992年10月5日発売の初代モデル「700C」から始まるThinkPadは、日本IBMの大和研究所(横浜市西区、現在はレノボ・ジャパン 大和研究所)で開発されたことで知られている。IBM時代からレノボに買収されて以降も製品展開は継続しており、累計出荷台数は2億台以上に上る。レノボ・ジャパン 執行役員常務 大和研究所の塚本泰通氏は「日本のモノづくりの力を発信してきたThinkPadが目指すものは“顧客の成功”にある」と語る。
ここで言う“成功”は生産性の向上とも言い換えることができる。ただし、時代が進むにつれて生産性の意味合いも変わってきた。当初はCPUやメモリ、ストレージなどと関わる処理能力が重視されていたが、その後ディスプレイやカメラなどへの要求も強くなってきた。近年では、仕事の合間にストリーミングを楽しむなどの従業員体験の向上なども求められるようになっている。「時代とともにPCの使い方は変わってきているが、ThinkPadの変わらないコンセプトとして“オフィスから仕事を解放したい”という思いを強く持っている」(塚本氏)という。実際に、ノートPCや無線LANの登場によって、オフィスの中でPCを持って自由に移動しながら仕事ができるようになり、オフィスの外でも自由に仕事ができるようになった。
ThinkPadは、生産性向上のための機能とデザインである「Purposeful Design」、場所問わず利用するための堅牢性と信頼性にこだわった「Trusted Quality」、新技術を積極的に取り入れて継続的なイノベーションを実現する「Relentless Innovation」という3つのコアバリューを追求して研究開発が進められてきた。そして、ThinkPad発売から20年を過ぎて新たな開発メンバーが増えてくる中で、熟練技術者の中にあった考え方や心構えをまとめて「開発哲学の木」として新たに策定するなどの取り組みも行っている。
30年の歴史を振り返る中で、ThinkPadの大きな特徴として挙げたのが「堅牢性」だ。塚田氏は「700Cは70万〜100万円と極めて高価な製品であり、ユーザーは大切に扱うと想定していたが実際には故障することが多かった。一定の堅牢性は確保していたが、ユーザーが大切に扱うとは限らないというのが実情だったわけだ。そこで、改めて堅牢性の基準を再検討しさまざまなテスト項目を追加するなどして対応してきた。顧客の声を基に技術を合わせて顧客の成功をサポートするというのは、700Cの時代から始まっていた」と強調する。
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