調査結果から見えた、いま製造業が注力すべきWebマーケティング施策とは?:間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(16)(3/3 ページ)
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第15回のテーマは「いまB2B製造業が注力すべきイチオシの施策」だ。
最も重要なのは「顧客ターゲットの明確化」
次に、別調査の内容も踏まえ、B2B製造業がWebマーケティングを成功させるためのポイントについて解説する。まずは、Webマーケティングで成果を挙げている企業が重要だと考えていることについて、調査結果を紹介する。
調査結果では、「ターゲットの明確化」を重要だと考えている担当者が6割以上と、最も多い結果となった。この「ターゲットの明確化」は、Webマーケティングを成功させるうえでの根本的な要因といえる。2位の良質なコンテンツ作りができるかどうか、3位の自社に合う施策選びができるかどうかも、根底にあるのは「ターゲットの明確化」ができているかどうかにかかっているためだ。どの項目もWebマーケティングを成功させる上で必要な内容だが、まずはターゲットの明確化が最も重要である。
ターゲット顧客情報のまとめ方
それでは、「ターゲットが明確になっている」とはどういった状態を指すのだろうか。それができているかは、以下の質問に明確に答えられるかどうかで分かる。
- ターゲット顧客が新たな発注先を探す背景は何か
- 発注先を探す際に抱えている技術的な課題は何か
- 発注先を探すための具体的な方法は何か
- 技術/製品に求める機能、性能、その他要素は何か
- 最終的に発注先を決定する際の要因は何か
なんとなくターゲットを設定している場合、属性情報(業種、職種、会社の規模など)にとどまっていることがほとんどで、ターゲット顧客が情報探索するきっかけ、抱えている課題、ニーズ、選定基準まで踏み込んで情報を整理しているケースは少ない。これらの質問に明確に答えられるようになるまで徹底的に情報収集し、以下のような形で顧客ターゲットの情報をまとめられるようになるとよいだろう。
「購買フローマップ」をもとに施策やコンテンツ案を検討する
ターゲット顧客を明確化した後に行ってほしいのが、「購買フローマップ」の作成だ。購買フローマップとは、ターゲット顧客が情報収集から購買に至るまでの行動を段階別に整理し、各段階の関心事や情報収集の方法を洗い出したものである。
B2B製造業がターゲットとする顧客の多くは、情報収集から購買に至るまでの期間が長いことがほとんどだ。このため、長い時間軸で顧客との接点づくりや、どのようなコミュニケーションを行うべきかを考える必要がある。購買フローマップを作成することにより、購買段階ごとにどのような集客施策でユーザーと接点を作り、どのようなコンテンツを作るべきかがおのずと見えてくる。
「ターゲットの明確化」のためには顧客へ聞くのが最も効果的
ターゲット顧客を明確化するためには、営業とマーケティング担当者が意見交換しながらペルソナを設定するのが一般的である。一方で、手っ取り早く解像度を高めることができる方法は、顧客に直接インタビューすることである。
最も良いインタビュー相手は、過去にWebマーケティングで新規獲得した顧客だ。導入事例取材という名目で話を聞いてみるとよい。インタビュー相手を見つけるのが難しい場合は、インタビューサービス(ビザスク、ユニーリサーチ、Sprintなど)を活用するのがおすすめだ。当社でもこの手法を取り入れるようになってから、企画立案のスピードが向上し、施策実施時の費用対効果が格段に上がったと感じている。
以上、いまB2B製造業が注力すべきイチオシの施策と、Webマーケティングで成果を挙げるためのポイントについて紹介した。読者が抱えているWebマーケティングに関わる悩みの解消、解決のヒントになればうれしく思う。なお、今回使用した調査レポートの全容に関しては、こちらのリンクから無料でダウンロードできるため、積極的に活用していただければ幸いだ。
Webマーケティングによる新規顧客獲得の成功要因の調査の概要
- 調査概要:製造業の新規顧客獲得に関する実態調査
- 調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー」の企画によるインターネット調査
- 調査期間:2024年2月26日〜同年3月4日
- 有効回答:Webマーケティングを実施しているB2B製造業(従業員数100人以上)の経営者/役員、マーケティング担当者106人
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筆者紹介
徳山正康(とくやま まさやす)
テクノポート株式会社 代表取締役
製造業専門のWebマーケティング事業と技術ライティング事業を手掛けるテクノポートの代表を務める。「技術マーケティングで日本の製造業に追い風を」を経営理念に、これまでに数名の町工場から一部上場のメーカーまで、累計1000社を超える製造業を支援し、数多くの企業の経営革新を実現。
グロービス経営大学院(MBA)卒業、(社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー、(社)Reboot 理事、(社)Glocal Solutions Japan 認定専門家。
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