調査結果から見えた、いま製造業が注力すべきWebマーケティング施策とは?:間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(16)(2/3 ページ)
コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第15回のテーマは「いまB2B製造業が注力すべきイチオシの施策」だ。
王道の施策は検索エンジンマーケティング
調査の結果、実施したことのある施策、費用対効果が高かったと評価した施策ともに、SEO対策とWeb広告(ほとんどがリスティング広告だと思われる)が上位2位を占めた。やはり、検索エンジンマーケティングによる集客対策は王道であり、当社がこれまで支援してきたWebマーケティング事例の成果とも一致する。
2024年1月に行った別の調査(メーカーの設計/購買担当者向けのインタビュー調査)でも、日常業務における情報収集手段はSNSやYouTubeなど多岐にわたるものの、新規発注先を探す際は検索エンジンを活用する担当者がほとんどであることが分かっている。このことから、受注確度の高いリード獲得のためには、検索エンジンマーケティングが最も費用対効果の高い手段であるという状況は、しばらく変わりそうにないと考えられる。
ポテンシャルのある施策は「ウェビナー」と「リストマーケティング」
では、ポテンシャルの高いマーケティング施策にはどのようなものがあるのか。調査の問1、2の結果を掛け合わせ、実施した施策の中で費用対効果が高かったと評価された施策をみると、ウェビナーが46.1%、リストマーケティングが57.6%と、ほかの施策と比較して高い割合となった。
ウェビナーはコロナ禍以降、王道の施策になりつつある。準備や後追い営業にそれなりの手間はかかるものの、見込み客と直接コミュニケーションを取る機会が得られるため、効果を感じやすい施策といえるだろう。
一方、リストマーケティングは手掛ける企業が少なく、サンプル数が少ない中で結論を出すのは強引かもしれないが、試してみる価値はある施策だろう。前述の別調査の結果でも、新規外注先を探すための情報収集手段として、「過去に売り込み(営業電話やメールなど)があった会社」から探す担当者が一定数いることが分かっている。現段階においてはSNSやYouTube(動画)よりも有用な手段といえるかもしれない。
SNS関連の施策も高評価 ただし活用する分野に注意
費用対効果の面では、SNSアカウントの運用、SNS広告もそれぞれ高い評価を獲得している。前述した別調査では、発注先企業を探す際にSNSを使用することはほとんどないとの結果を得ていたため、筆者としては意外な結果であったと受け止めている。
今回はB2B製造業のマーケティング担当者に広く調査を行ったため、顧客ターゲットを設計開発者以外に設定しているケースも多く含まれている。このため、B2B製造業の中でも一部SNSマーケティングと相性のよい分野があると考えられる。筆者のこれまでの経験から言うと、想定しているターゲット顧客の購買期間が短い場合(急いで新規発注先を探さなければならない場合)では、SNSが活用されることは、ほぼあり得ないとしてよいと考えている。
YouTubeマーケティングは関心が高いが成功難度は非常に高い
また、調査の問1、3、4の結果をみると、YouTube(動画)マーケティングに関する関心が非常に高いことが分かった。しかし、効果を実感できている企業はまだ少なく、施策を成功させる難度が他の手法と比べても高いことが分かる。
多くの企業でYouTubeマーケティングがうまくいかない理由として、YouTubeで視聴者数を伸ばすためのノウハウが確立できていないことが挙げられる。うまくいっていない企業の多くでは、製品や技術のPR動画をアップしている事例が多い。だが、まず押さえていただきたいのは、視聴者が求めているのは技術解説や業界の動向といった学習系のコンテンツであることだ。
動画検索を使って新規発注先を探索するケースはほとんどない。多くの担当者が、技術に関する知識を深めるためや、業界の動向をつかむために動画を視聴している。ここを理解し、自社のPRではなく、動画閲覧者のニーズに沿った動画をアップすることが必要だと考えられる。
製造業界における比較サイトの存在感は薄れるばかり
比較サイトは、かつてはWebマーケティングの中心的存在であった。しかし、検索エンジンが高性能になり、自社Webサイトによるマーケティングに注力する企業が増えたため、その存在感は年々薄くなっている。
情報掲載者側のB2B製造業は、以前は自社でWebサイトを運用する手間やコストが大きく、簡単に情報を掲載できる比較サイトを重宝していた。しかし現在では、Webサイト運用の手間やコストが大幅に下がったため、比較サイトを利用する理由が薄れている。一方で見込み客である情報探索者側にとっても、自社でWebサイトを運用する情報掲載者が増えたことから、検索エンジンで探索を開始することが最も効率的な情報収集手段になっている。
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